こんにちは。
今日も酷暑の長崎地方です。
さて、今日のブログは、拙著「千年の街~ハウステンボス物語~」を
webで巡る聖地巡礼の第13弾です。
時空を超えて17世紀のオランダからやってきた少年ジャックを巡り、子供達が抱える複雑な心境をお伝えしました。みんな、タイムスリップなど信じられません。子供達の思いは様々。受け入れようとする子、疑ってかかる子、いろいろです。夏休みも終わりに近づいています。前回はここまででした。
夏休み最後の日。つまり、8月31日。双子の修と江梨花は長野から来た祖父母を見送ったあと、杏奈の家に向かいます。杏奈の母親はアメリカ人。夏休みはハワイの祖母に会いに行ったりしていたので、仲良しの双子も久しぶりの再会です。杏奈の家はワッセナーの端っこの一軒家。双子の家は同じワッセナーのマンション。ワッセナーの端と端です。
仲良し三人組の修、江梨花、杏奈に加え、杏奈の弟の海瑠も一緒におやつの時間です。宿題の進捗状況や夏休みの思い出などお喋りが止まりません。
一通りの近況報告が終わった頃、ふと杏奈が言いました。朝のラジオ体操でジャックと会ったこと、ジャックはホースランドで働いていること、日本語を勉強していることを双子に話しました。そして最後にデイヴィッド校長先生からの言葉「友情の始まりは理解すること」を伝えました。
江梨花は何故か少しイラつきました。自分より先にあの少年と杏奈が仲良くなっていることが気に入りません。思わず強い口調で杏奈に言います。
「バッカじゃないの。ホントにタイムスリップしたって信じてるの?校長先生はうちのママとおばあちゃんにジャックのことを親戚の子って言ったよ。タイムスリップなんて言わなかったよ」
杏奈は江梨花の口調に困惑しつつも答えます。
「ジャックのことはデリケートな問題だから、慎重にしなければって校長先生は言ってた。わからないからこそ、わかろうとすることが大切なんだって」
すると黙って聞いていた修も口を開きます。
「そうだよな。僕たちみたいな子供にしたってまず信じられないし、大人に言ったらなおさら信じないよ。普通は警察に届けるよな。やっぱり校長先生が普通じゃないんだよ。自分はサンタクロースの弟なんていってるし」
杏奈は言います。
「もしも悪いことするなら、とっくにやってると思うんだよね。もう二ヶ月経つし。逃げるなら逃げてるよ」
黙る二人に杏奈は自分の考えを伝えます。
「もしも、犯罪とか起こすつもりなら、私たちで見張ることもできる。でも、もしも本当にジャックがタイムスリップしてきたんだとするならば、ジャックは今、めちゃくちゃ悲しいし、不安だと思うんだよね。家族のことも心配だろうし、どうにかして17世紀のオランダに帰りたいと思うし、でも帰れないし。私、こないだ海瑠とシーボルト出島蘭館に行ってみたんだ。とても怖かった。電気がないから暗いし、自分も何かのきっかけで違う時代にタイムスリップしたらって考えると、超怖いと思った。しかもジャックは国も違うんだよ」
修と江梨花は、杏奈がジャックの事を理解しようとして行動を起こしたことに驚いていた。
「それで、他にも何か調べたの?」
修の問いに杏奈は答えます。
「ママに頼んで佐世保市立図書館に連れてってもらった。そこで17世紀とかオランダとか調べてみたんだ。難しい本ばかりだったけど、一つだけキーワードがあったんだよね」
「なに?」
「大航海時代。ねえ、なんか思い出さない?」
三人とも、思い浮かべるものは同じです。
「大航海体験館!」
ハウステンボスのアトラクションの一つで、映像に合わせて床が動き、振動し、大画面大音響、迫力の映像体験ができます。
三人と海瑠はこれから大航海体験館に行ってみることにしました。
(中央のやや左のオレンジの建物が旧大航海体験館)
テーマパークに住むということは、いつでもそこで遊べるということです。お揃いの年パス会員証を首からぶら下げて、杏奈の家から近い東門から入場しました。
大航海体験館は、オレンジ広場の係留帆船デ・リーフデの横にあります。大航海体験館のストーリーは、17世紀の大航海時代、オランダから日本の将軍へ贈り物を届ける途中に大嵐に遭い遭難するというものです。奇しくも、ジャックの身に起きたことと同じです。スクリーンの嵐の映像に合わせて風が吹き、床が縦横に揺れ、スピーカーからは風や雨の音、乗組員の怒号が聞こえます。子供達は座席の前の安全バーに捕まらないと怖いくらいでした。結局最後は主人公の少年は嵐で亡くなりました。
大航海体験館を出た子供達は、言葉を失っていました。そして真っ直ぐに近くの帆船博物館へ足は向かいます。海と歴史をテーマにした小さな博物館で、帆船模型や海戦のジオラマなどが展示されています。
子供達はそこで意外な人物と出会いました。そこにいたのはジャックでした。ジャックは船長の机の前に立っていました。そこには海図やコンパスやその他の航海に必要なもの展示されていました。子供達は、佇むジャックの表情を見て、息を呑みます。ジャックの横顔には、悲しみとも絶望ともいえない苦渋の表情がありました。ふと、自分に向けられている視線に気がついたジャックは、無言で立ち去りました。
杏奈も修も江梨花も、初めてジャックの悲しみや怒りや絶望に触れました。そして、ジャックのために、自分たちは何ができるのだろうと思うのです。自分以外の誰かのために役に立ちたい。そう思いました。
その後、いつもの三人の秘密基地である、ハウステンボス灯台に向かいます。
夕暮れの中、三人は決心しました。
友情の始まりは理解すること
理解する、相手を知るには、心を開いて仲良くならなきゃ。
明日の始業式が終わったら友達宣言だ。
ジャックと友達になろう。そして、ジャックのためにできることをしたい。
三人組と海瑠を夕焼けが照らしていました。夏の終わりの出来事でした。
今回はここまで。
文中に出てくる、シーボルト出島蘭館も大航海体験館も、今はもうありません。シーボルト出島蘭館は出島を再現したもので、行灯の明かりだけで、本当に暗いです。暗い中にシーボルトの人形がありました。超不気味です。だから私は作中では、この場所を学園の子供達の遊び場、しかもお化け屋敷ごっこの場所にしました。するとどうなったでしょう。出版したあと、ここは本当にお化け屋敷のアトラクションになりました。マジか・・・と思いましたw。どなたか社員さんが読んでくれたのでしょうか?シーボルト出島蘭館のあるエリアはすべてホラータウンというエリアに改装されました。私がバイトしていた時期です。夜はゾンビショーもありました。実はこのとき働いた経験が、今執筆中の続編に大きく活かされています。自分でもこのトリックを思いついたとき、働いてて良かった~と思いましたw。そして現在は今年オープンしたばかりの光のファンタジアシティになってます。
大航海体験館は今はシューティングゲーム場になっています。場所は同じです。週末は結構お客さんが並んでいます。ワンピースカフェの向かいです。
帆船博物館は今はドラッグストアのココカラファインになってます。
そうそう、街のエリアの名前も変わりました。ですが私は敢えて、作中と同じ昔のオランダ語の名前を使用しています。
例)港町 旧:スパーケンブルグ
現:ハーバータウン
今日はところどころ、本文と写真が合っていません。スマホを変えたら最近取った写真が消えてました。PCにバックアップしていたのですが、なぜが容量オーバーと表示されてアップロードできません。
あしからず。
読んでくださって、ありがとうございました。