そこまできた季節の匂いを乗せた風が、ふわりと頬を撫でる。
『ねえ、儚く散るものって何かなあ?』
「随分と急だね」
『そーかなー』
君はいつだって変わらず、飄々とした掴みどころのない話し方で続ける。
『私はねー、やっぱり色かなー。…何その目―、意外だと思ったの?』
「そりゃあね」
正直そんな答えが返ってくるとは思ってなかった。そもそも僕から君に話を振ったわけではないのだけれど。てっきり君は『命』だとか言うと思ってたから。いや、いつもの君ならきっとそう答えてただろう。
「それは何で」
理由を問うと、何故だか楽しそうな、悪戯がばれるのを待っているような、そんな笑顔を向けられる。
『んー、まだ内緒かなあー』
「なんだよ」
『えへへ、お楽しみだよー』
「相変わらず何考えてるのかわからないな、君は」
いつものことじゃない、そう言ってやっぱり君は楽しそうに、けれど少しだけ寂しそうに笑う。
きっとその理由を聞いても君は煙に巻くように笑ってくるんだろうな。あえて口にせず、無邪気な君を見ているこの瞬間が何より愛おしいと思う。
『けどね。私は―』
君が空を見上げると、強い風が僕らを包む。君の言葉を飲み込みながら。
「ごめん、もう一回言って」
『んーなんでもないよー?おなか空いたなーって。今日のディナーはなんですか、シェフ?』
「そんな顔したってなにも出てこないからね」
『つれないなあー』
頬を膨らませて、ジロリと睨む君。そんな君を微笑ましく見守る。
風にさらわれた君の言葉が、悲しき雫となり、やがて雨を降らす。
―けどね。私は、このまま時が止まればいいのになーって思うよ。未来なんて来なければいい
秘密を知るのは、もう少し後の話ーー
春音




