出産予定日を過ぎても、なかなかその気配はなくて。

「赤ちゃんが危なくなる前に、促進剤を使ってお産しましょう」そう言われて、入院が決まりました。

ドキドキしながら病室に向かうと、担当してくれた助産師さんが、なんと私の大好きな“出産のお守り”をくれた友達に、雰囲気がそっくりで…その瞬間、なぜか心がふっと軽くなって。

 「ああ、大丈夫かもしれない」って、思えたのを今でも覚えています。 


 そして迎えた出産の瞬間。

 産まれてきた我が子は、すぐに泣いてくれました。

 「泣いてる…よかった…」

 安心したのもつかの間で、写真を一枚だけ撮ったあとは、すぐに先生たちがNICUへ。私は分娩台に残されたまま。 

病室でも赤ちゃんのぬくもりも、声も、すぐそばにいない現実に胸の奥がぽっかりして、すごく…寂しかったことを今でも覚えています。 

 産後すぐの私は、搾乳をしてNICUに母乳を届けることが、たった一つ自分にできること。 

 小さなボトルに入れた母乳を持って面会に行く時間が、一日の中で一番の楽しみになっていました。


 でも、数日後には私だけ退院。 

あんなに頑張ったのに、我が子と一緒に帰れない退院の日。

 上の子が「赤ちゃんは?」って不思議そうに聞いてきてそれもまた胸がぎゅっとなりました。 

 「会いたい」「抱っこしたい」でも、今できるのは“届けること”だけ。

 NICUへの母乳と、祈る気持ちを精一杯込めて。

 付き添い入院に備えて、とにかく体力をつけなきゃと、必死に休んで、食べて、整えて。 

 そして産後2週間。

 子どもは先生と飛行機で、遠くの病院へ。私は車に乗って、あとを追いかけるように、その病院へ向かいました。