目を瞑って息を止める -2ページ目
バスタブに入ったら呼んでよ。



「敏弥ー。」







「背中洗った?」

「届かへんから前だけ。」

「もう、後で洗ってあげるから。」


バスタブから仰向けに頭を出してる京君の髪を洗う。
包帯を巻かれた手は濡れないように
ビニールで包んでいる。

いつもは何でもやってもらうけど
こんな時くらいはお返ししないと。


「手、まだ痛む?」

「別に。」

「そう言うと思った。」

「じゃ、聞くな。」


熱いお湯にタオルを浸し
堅く絞って目の上に乗せてあげる。
気持ちいいし、シャワーのお湯がかからなくていいね?


「流すよ。」


おでこから優しくシャワーを当てる。
湯気が一気に上がった。


「なんであんなことになったの?」

「……。」

「俺、怖かった。」

「……。」

「あの時…。」

「ごめん。」

「……。」

「あったかいな、気持ちええよ。」

「うん。」



よそ見をしてシャワーが自分にかかった。
パンツが足に張り付く。



今日は俺が京君の髪を乾かしてあげる。


魔法の言葉「おいで」を今日は俺が言ってあげるよ。

役立たずだけど。








riootoji