MOON LIGHT

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恋愛小説系を書いてます。

恵理央の小説をのんびり更新中。

現在は『BLACK DIAMOND』という野球選手との恋愛小説をUP中。


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正直、城崎を見て、若葉は惹きつけられる何かを感じた。

そこにいるだけで、『カリスマ性』を感じた。


以前仕事で他の選手には逢った事はあったが、こんな感じは初めてだった。


…正直なところ野球に疎い若葉でも城崎の名前くらいは知っている。

『北海道ゴールドウイングス』の外野手で主力選手。

オフシーズンになるとTVにもよく出てて、なんだか大人な印象…。

この『北海道ゴールドウイングス』は札幌に本拠地を置き、3年前にプロ野球で新規加入を認められた新チーム4つの内のひとつ。

その4チームの中でも、人気も実力も急上昇中。

昨年は確か、リーグ2位まで浮上していたはず。

新設された際に、いろんなチームから主力選手もやってきて話題になったくらい。

その中でも、この城崎も新設時にやってきた…って事位は流石に知ってる。


「で、若葉。この城崎さんが代表取締役をやってる事務所の社員としてどうかなって話なんだよ」

正二の言葉に、我にかえる。

正直、その声を掛けられるまで、無意識に城崎の瞳から目が離せられなかったのだ。

優しげな瞳の奥にある『なにか』に捕まってしまいそうな気さえした。


「っえ?…城崎さんが、しゃ、社長?」

正二と城崎の顔を見比べながら、話を理解しようとする。


「つまりだ。実はここのチームの選手達も人気も出てきて、野球以外のことが多くなってきたので、そのスケジュール管理やら、他の企画なんかをする個人事務所的なものを城崎さんと他の2人で作ったんだけど、その会社の社員が必要ってことで」

「はぁ…」

「だから、僕が代表取締役って言っても、3人の中で一番年上だったってだけなんだよ。たいした理由もないんだよね。それじゃ、他の2人も紹介するよ」

正二の説明と今までの自分の知識を合せてみて、ようやく状況が飲み込めてきた。

…なるほど…。


そう言って城崎は再びグランドに戻って残りの2人を呼びに行ってしまった。


「…ようやく事情が飲み込めました」

「すまん、城崎さんは予備知識を若葉に入れないで連れて来て欲しいっていうもんだからさ」

その正二の言葉の意味はよく分かる。

最近北海道でも、プロスポーツ選手へのファンの加熱振りと言うのが話題になっていて、所謂『業界』にいた若葉の耳にもその話は届いていた。

やはり、ここの球団の選手も同じことだった。

であれば、城崎が正二に対して予備知識を入れないで欲しいという理由も頷ける。

彼らが欲しいのは今回『ファン』ではなく、『社員』であるのだから、ミーハー要素は必要ないのだから。


「大丈夫よ、その位分かってるって」

「俺は若葉の良さを知ってるけど、さ。そこはごめんな」


正二は申し訳なさそうに頭をかいていた。

もし自分が正二と同じ立場なら同じ対応をしていただろう。


「ごめんね、待たせて」


正二と話している所に、城崎が他の2人を連れて、若葉達の前に戻ってきた。

「いいえ、こちろこそすみません」

「いやいや、わざわざ来てもらってるのに、ごめんね」

そう言うと後ろから追いかけて来た2人に手招きをする。


「すんませーん、お待たせしましたぁ。あーかわい子ちゃん発見!」

「幸さん、この娘?うちの事務所に入ってくれるっていう娘は?」


走って来た2人は若葉に興味津々。

その勢いで多少圧倒されてしまいそう…。


「こらこら、近付きすぎ。若葉ちゃんがびっくりしてるだろ。まずは自己紹介くらいしなさいって」


その2人を落ち着かせて、若葉に紹介させる。


「あー、すんません。じゃぁ俺から俺から!初めまして『北海道ゴールドウイングス』投手の海原 涼って言います。よろしくね」

そう言う海原はにっこりと微笑むと若葉に手を差し出してきた。

「初めまして、野々村 若葉です」

そのアイドル系のかわいらしさを持った海原は、一昨年高校生ドラフト1位で7球団から指名を受けた中、この『北海道ゴールデンウイングス』が見事指名権を勝ち取り、入団。

そして、その年の新人王を取り、昨年も二年目のジンクスもなく活躍中の先発投手。

しかし、にこにこ微笑んだままの海原は一向に若葉の手を握ったまま離そうとはしない。


「いってぇ、なにするんすかっ!樹さん!」


いつまでも若葉の手を握ったまま離さない海原の腕を遠慮せずにチョップをかましてきたのは、海原と一緒にやってきた彼だった。


「お前がスケベ心丸出しで、嫌がらせしてるからだろ」

「樹さん、一応俺ピッチャーなんですけどぉ!」

「だったら、自分でされる原因を作るな」

「…いってえ!!」


まるで漫才のような掛け合いをする二人にくすっと笑ってしまう。


「ごめんね、…えっと若葉ちゃん…だっけ?こいつ、女に見境ないから気をつけてね。改めて、初めまして。『北海道ゴールドウイングス』ショートの山中 樹です、よろしく」


文句を言い続ける海原をぽいっと城崎に預け、爽やかな笑顔で手を差し伸べてきたのは、城崎とはまた違った大人の雰囲気をする山中だった。


「はじめまして、野々村です」


一通り挨拶を済ませると、正二が城崎の目を見て、何かの合図を受取った様で、今日の一番の目的について話し始めた。


「そしたら、一通り自己紹介を済ませて頂いたので、本題に入りたいんですけど。彼女が『SKY WING』の社員に俺が薦めたい野々村 若葉です」


「…『SKY WING』?」


初めて聞く名前に若葉は正二の顔を覗き込む。

その様子に気づいた城崎は、若葉に説明し始めた。


「その『SKY WING』とは俺達の事務所の名前なんだよ。城崎の『S』、海原の『K』、山中の『Y』って感じで名前の頭文字を使うと『SKY』なんだよね。それに今いる『ゴールドウイングス』と自分達が新しい風を起こす翼になろうって意味をこめて『WING』なんだよ」


「…『SKY WING』…」


その社名を小さく反復してみる。


不思議とその言葉は若葉の中で大きな変化を起こしそうな予感がした。


いつまでも今までの自分にしがみついていてはいけないのだ。

新しい一歩を自ら歩き出していかなくてはならないのだから。


若葉の心の中に、大きな風が吹いた気がした。


もしかしたら、この3人に出逢った事はこれからの自分には大きなステップになるのではないかと。

せっかくのチャンス…逃していいの?


「俺は、さんせー!」

「俺も、彼女ならOKだね。で、城崎さん的にはどーなの?」


目の前の海原と山中は若葉のことを気にいってくれたようだ。


「僕も彼女ならいいと思うよ。仕事ぶりは正二に聞いてるし。実際逢ってみて、一緒に仕事したくなったしね」

そう言うと城崎はにこりと優しく微笑んだ。


「って、事は…」

「「「採用決定!」」」


3人の声は揃ってそう告げた。


「で、若葉はどうする?」

隣で状況を見ていた正二は、自分の事の様に喜んだ表情で若葉の顔を覗き込んだ。


自分を必要としてくれるのはありがたい。

そして不思議とこの3人と仕事をしてみたいと思った。


「こちらこそ宜しくお願い致します」

そう言うと若葉は深々と頭を下げた。


「やったね!宜しくね若葉ちゃん」

「こちらこそ宜しくお願いします、海原さん」

「あー、堅苦しいなぁ『涼』でいいよ、『涼』で」

「もう馴れ馴れしいなぁ涼は。俺も宜しくね。俺も『樹』でいいから」

「はい、宜しくお願いします。樹さん」

「僕もいろいろと頼むね、若葉ちゃん。俺も『幸』でいいから」

「はい…じゃぁ幸…さん宜しくお願い致します」


そうして若葉の新しい一歩が始まったのだった。