『空の境界・下』(奈須きのこ/講談社ノベルス)読了。
 かなりがんばりました。


 この小説の登場人物、本当に説明好きなんだな、って、思います。饒舌に奔流のように語られる言葉の数々の多くは、興味なければスルーしても小説を読み進めるのに問題がありません。その中に巧妙(?)に混ぜられた割合にして1/10くらいの言葉だけが、ストーリーに直接関連してきます。
 後の9/10を楽しめるか、楽しめないかが、この本の評価の分かれ道でしょう。

 伝奇ライトノベルとしてみたら、アリだな、面白いな、と、思います。
 伝奇風味の恋愛物語としたら、私はナシです。これは、面白いかと面白くないとは全然別の話で、恋愛観の違いだと思います。詳しく語るとネタバレなんですが、単純にいえば「そんなに頭でっかちの恋愛、私はイヤだ」(笑)。


 自分の10代を思い返すと、洗脳効果が高いものが好きでした。
 強い生き方や、自分に自信のある人の決めつけ。そんなものが輝いて見えて、憧れました。
 今、「私は私の好きにやる」と、わがままな大人になった私が、この小説に耽溺できないのは当たり前かもしれません。
 奈須きのこの文章は、割と洗脳効果の高いもので、10代だったら一撃でやられてそうな気もします。


 特別であることに何より憧れた時代。
 そんな季節を思い浮かべながら、本を閉じたのでありました。