八月歌舞伎座第三部
八月歌舞伎座の第三部は今月人気の高い「怪談乳房榎」と「お国と五平」。
まずはお国と五平。
もうはっきりいって三津五郎の友之丞はストーカーです。
そして「俺は悪くない。時代が悪いんだ」の典型です(笑)
さすが原作谷崎潤一郎。
粘着質さ加減が最高潮です。
好きなお国が自分以外の所に嫁いだので逆恨み、お国の夫を闇討ちにしたのち、
お国が仇討ちに出ると見て近辺に潜み、ずーっとずーっとあとをつけて
お国と五平の一部始終を見ていたという立派なストーキング。
お国が病気療養中の間、窓の下でずっと尺八を吹いていました(友之丞は虚無僧姿です)
というところで、あら意外とロマンティストなのね、と思っていたら、
「お国と五平が男女関係になったとき(この二人は仇討ち道中、そういうことになって
国に帰ったら結婚するつもり)、隣の部屋でその様子を聞いていたのだ～」
ときたもんだ。ヒ～～
結局のところまっさらの善人なんていない、
夫の仇を討つ旅の途中、五平といい仲になってしまったお国しかり、
主人の仇討ちのはずが、お国と国に帰って結婚することのほうが目的となり
仇討ちなのかただの邪魔ものの始末なのかごっちゃになってしまった五平しかり、
といったテーマのはずなんだろうけれど(たぶん)、
この友之丞の現代に通じるストーキングに圧倒された演目でした……
二番目が怪談乳房榎。
完全に勘三郎の十八番になっている感のあるこの演目。
安心して見られました。
橋之助の悪さっぷりも板に付いた安定感。
本水も迫力満点。
ただもうすごいとしか感想の浮かばない完璧さ。
そしてどうしても花道での傘と菰の早変りがどうしているのかわかりません……
いっつも「来るぞ来るぞ」と眼を皿のようにしてみているのに……。
勘三郎は役者としても一流なんでしょうが、趣向の凝らし方も
本当にプロ意識高くて観ていて気持ちいいです。
ちなみに平日の夜会社を抜けて観に行ったせいか、この日の客席はなぜかおじさん大発生。
あちこちでスーツのおじさま方が「いやいや、どうも」「これはどうも」状態。
何かの会社か学会のイベントだったのかしら。
それから女子高校生も修学旅行なのか授業なのかわんさかわんさか。
売店で興奮した？女子高生にタックルかまされました。なぜ……
八月歌舞伎座 第二部
