ぽたあん
どろどろ
ぴちぴちぴち
ぷつぷつ
やけたかな
まあだまだ
しゅ
ぺたん
ふくふく
くんくん
ぽいっ
はい できあがり
(こぐま社 しろくまちゃんのほっとけーき より)
子どもの頃
ぼくはホットケーキを焼いているお母さんをみるのがだいすきだったんだ
キッチンに優しい顔でたつお母さん
横について
絵本のように
ほっとけーきの表面がぷつぷつするのをみるのが楽しくて
絵本みたいだ
ってぼくは純粋に感動したんだ
なんだかゆっくりな時間がすぎて
焼き上がるまでぼくはお母さんと
ふたりきりの
誰にも邪魔されない
ゆるやかにおだやかにすぎる時間だったんだ
あの頃の時間を味わいたくて
ぼくは
ひとりでキッチンにたつ
できるだけ幸せな気持ちを抱えて
キッチンにたつ
ほっとけーきの粉とたまごとぎゅうにゅう
ぐるぐる混ぜる
あの頃はボールを押さえる係だったのが
今では材料を混ぜることもボールを押さえることもできるようになったよ
しっかりと混ぜてる間に火をつけて
ぽたんとほっとけーきの材料をフライパンにおとす
不思議なことに
あの頃のゆっくりした時間は
もう味わえなくなっている
すぐにほっとけーきの表面はぷつぷつと変化して
ひっくり返して
またすぐに裏面にも焼き色がつく
一枚、二枚とお皿に移す
それでも
いつもよりは時間が太った気がして
ほっと
いい匂いだ
バターをぽとっとおとし、はちみつをたらりとかける
いただきます
と小さく呟く
ひとり虚しく幸せな
昔の時間を辿りながら
ぼくは今を精一杯に味わう
せかせかとすぎる毎日の時間と逆光するのもたまにはいいよねと
小さい頃は努力しなくていい許しを
がんばってしてみる
ほっとけーきを食べ終えると
またいつものせかせかがはじまるんだ
すぐにほっとけーきの時間、戻ってくるかなと淡い期待を寄せながら
ぼくはほっとけーきのお皿を洗ったよ
