皮肉なことに
大切なことは
ひどく悲しい時に知る
昔パパがたくさん読み聞かせしてくれた
一つの絵本
「お腹いっぱい いい気持ち」
引用:あかちゃんのあそびえほん、いただきます
ふと頭に浮かぶ
ひとりささやかなごはんを食べ
ごちそうさまと呟く前に
なにげなく
お腹いっぱい いい気持ち
と、そう言った
なぜか幸福感に包まれて
今はとても儚い時間なはずなのに
お花畑のような空気が漂う
パパがたまに早く帰ってきたあの日
今日はパパがえほん読もうね
と言ってくれた時は必ずこのえほんだった
パパは本当にお腹いっぱいで満たされたみたいに
心から「お腹いっぱい いい気持ち」
っていうんだ
ぼくは
安心してパパの大きさに包まれながら
眠りについた
そんな日々がずっとあると
信じて疑わなかったいつかのあの日
今じゃずっとずっと
あの頃よりも大切なのに
毎日会うことができないなんて
皮肉なことに
幸せな瞬間は
儚く脆い瞬間に
思い出されるものだ