兄からの電話
「おー!休みかぁ?今起きたんかぁ?」
うん。
「親父、また倒れた。
救急で運ばれた
今日ヘルパー行く日や、
行ったら嘔吐して、ションベン漏らして倒れてたみたいや。連絡あった」
…。また…。
「病院行ってくれるか。お前家から近くや」
(邪魔くさっ)
んま、何やねん。
…。
『ヘルパー曰く、りんみぃ、りんみぃって、お前の名前呼んでるらしい』
……。
(邪魔くさっ)
わかった…。
んま、やっとの休みやのに…。
また、ウチかよ…。
『悪いな。俺も夕方、仕事終わったら行くから』
…うん。
私は病院についた
しばらくすると
呼ばれ
父の元へ
“り…んみ…ぃ~りん…みぃ…呼…んだの…に
な~ん……も…言わんと…立ってる…"
医者が私に
『一緒に暮らしてます?』
いえ、別です。
親父、ウチは今来たんやで。
お前…。何回……呼ん……でも………。何も喋らんと………立っとる。
親父
幻覚見てる…。
結局そのまま入院となった…。
脳梗塞
医者
『ほとんど目が見えてません…。』
そうですか…。
医者
『治る事はないので、これ以上酷くならないようにする為の処置します…。』
わかりました
医者
『以前よりも、状態は良くなる事はないので…』
わかりました
色々な気持ちの中
正直
大変や…。
今に至るまでに
色々大変な事があった
父とも色々な事があった
大きく息をする
父のシワだらけの
横顔を見ながら
まだ 生きたいか?
と思う私がいる
『りん……みぃ』
うなされながら
私の名前を何度も呼ぶ父
まだ生きたいのか…
『りん…み…ぃ。』
呼ばんといて
もう呼ばんといて
朝の着信3回コールを
止めてから
この日が、すぐにくる事をわかっていた
こうなる事をわかっていた
父は
ヘルパーが来る
たまたま来る
3~4時間前に倒れた
ヘルパーが来るその日でなければ…
恐らく…
…だと思う…
呼ばないで
そんな事を
考えてしまう私を
呼ばないで…
父は
幻覚を見ながら
眠っている
『り…ん…みぃ…呼…んだのに…見て…立って…るだけや…呼ん…だのに…』
3回コール
断らなかったら良かったのに…
歯医者に連れて行き
手を引いてあげれば良かったのに…
もう少し
実家に行ってあげれば良かったのに…
生きていなければ
良かったのに…
色々な思いが
ぐるぐるまわる…
良かったのに…
よかったのに…
これからも
いくつもの
よかったのにを
抱えて
父を見るんだろうな
…私
父は
私がある一時期から
距離をおいた事を
幻覚として見えてるんだろ
その距離が苦しくて
幻覚が見えたんだろ…
やっぱり
親不孝だな
私
シワシワの父の顔
まだ 許せないでいる…
その後
誰もいない実家に
入院準備をする為に行った
カレンダーに
赤いマジックで
私の娘の誕生日に
赤い二重マルをつけている父
私の電話番号を
大きく 書いている父
ヘルパーさんの毎日書く
その日の日報に
【失禁 嘔吐あり。裸で倒れている。いつもと違う様子の為救急車呼ぶ。
りんみぃ!りんみぃ!
と叫んでいる。幻覚見えているよう?】
……………。
ごめん。
それでも、まだ全てを許せないでいる自分が
辛い…。