著者 山田詠美
出版社 新潮文庫
★★★★★(殿堂入り!)
【あらすじ】
私の心を束縛し、私の自由を許さない美しき親友のえり子。その支配から逃れるため、私は麦生を愛し、彼の肉体を知ることで、少女期からの飛翔を遂げる(「蝶々の纏足」)。教室という牢獄の中で、生贄となり苛めをうける転校生の少女は、自分を辱めた同級生を、心の中でひとりずつ処刑し葬っていく(「風葬の教室」)。少女が女へと変身してゆく思春期の感性をリリカルに描いた3編。
【感想】
最初の1冊は、やっぱり、これかなあ。
とにかく、いろんな意味で、痛快。
そしてグロテスク。
だけど、そのグロテスクさが、途方もなく美しい。
文章が、選ぶ言葉が、溜め息がでるほど美しい。
山田詠美さんの“巴里製皮膚菓子”という、詩集を読んだとき、
文学って、芸術なんだ。
と、初めて感じた。
人生に影響を与えた本、って多くはないけど一冊でもない。
でも、この本は確実にその中に入る。
考え方。生き方。言動。
今の私を作る、ひと欠片。
そんな本。
(蝶々の纏足)
ん~~!もう!!
≪十六にして、私、人生を知り尽くした。そんな筈、ないけど、とにかくそう思い込んだ。≫
冒頭の一文ですが、
この句読点の打ち方!
ぷるぷる震えちゃうほど、好き。秀逸。
計算された天然って、う○こぶつけたくなるくらい、大嫌いだ。
だから、えり子、嫌いだ。
でも、その計算っぷりにはあっぱれ。
実際に存在していたら、そんなこと、これっぽちも思えないけど。
本物の天然な人間はもっと嫌い。
なにが嫌いって、本気で嫌いになれないところが、一番嫌。
出会ったら柱の陰に隠れたい。
昔の、忘れたいような、青くくだらない自尊心とか、
自分を認めてほしい、見てほしい、賞賛してほしい、っていう自己誇示欲とか
実は、それを今もたいして変わらず持っていることとかを
容赦なく引きずり出されて、目の前に突きつけられる感じ。
人は醜いものですよね。
でも、美しさって、そこにもあると思う。
(風葬の教室)
転校してきた女の子が、いじめられて、仕返しする痛快なお話。
と、いっては身も蓋もありませんが、乱暴に短くすると、そう。たぶん。
私も小学1年生で転校してきて、苛められたから、すごく共感できる。
なーんて、恥ずかしくて、安直過ぎて書くだけにとどめるけど
それが、この物語を面白い、と思うことに影響しているなら、
わたしは自分を恥じる。
傷つけられたら、傷つけたくなる。
心底憎んだら、誰かを殺したくなることだってあるでしょう。
わたしは、そうだ。
だれだって、心の中に墓地を持っていて、遺体を風にさらしている。
と、わたしは思う。
≪私の心には墓地がある。けれど、私は死骸に土をかけてやる程、親切ではありません。死んだ人を野ざらしにしておくことを風葬と言うのだそうです。それは残酷な風習でしょうか。私は、そうは思いません。
~中略~
けれど、草や木は私を殺すには、あまりにも若いただの生きものなのです≫
最後、とても好き。