死ぬために生きる

彼は言う
彼の父は彼の成人を待たずに自殺した

長寿家系の私はあまり死を意識しない

ただ死んだように生きるのは御免だ。

生きてる実感がない人生も最悪

生きるために死がある

私は思う。

自分はもう若くないし、夢を語る歳でもない。

だけど今より先の未来は皆平等にある。

32歳まで何の取り柄もなく、普通の専業主婦だった私だが、今は何とか自立している。

未来に向けて今を生きている。

彼は私の社長だが友人でもある。

未来は二人が頑張った分だけ切り開く事が出来る

だから寝ないで働いたりもするけど、そこまで信じ合えるのは、自分たちにはそれしか這い上がれる場所がないからだ

人生や未来、今ある全てを共有しているからこそ愛してしまったのではないかと思う。

他に変われる人などいるわけない。

愛だけを交わしているのではないから

私が独立するまで情念がおさまることはない。

いつかそんな日が来てしまう


不安は消えることが無い


私には誰かに愛される資格がない


そう信じているから


きっと幼少期に何らかの問題があったと思われる


それはどうでも良いが、愛される材料が思い当たらない。


自分のポケット。アルバム。宝箱。かばんの中。


どこを探したってどこにも無いのよ。


愛される自信も、愛される理由も、愛される資格さえも掴む事が出来ない。



君は信じないだろうけど、誰よりもいとおしい。



そう言われて1年が過ぎた。


今でも同じ顔で、同じ台詞を吐く貴方は無責任だ。


私は受け止める事も、受け入れる事も出来ずに、ただこの時間が続いてくれることを願う。


私が自力で羽ばたけるようになるまで。


その頃には、愛される資格くらいは得ていたいものだ。




それでも好きで仕方ない


私に恋愛感情が湧くとは思いもよらなかったが、湧かない方が良かったとさえ思うくらい愛してる。


たまに切なくってどうしようもなくなる


彼は泣きそうな顔で言う


こんなに愛情を注いでも、こんなに時間を費やしても、悲しませる原因があることが悲しいと


それでも好きで仕方が無い


私は彼を誰より知っている。


彼は誰より私を知っている。


私たちは人生を共有している。


今を費やし未来を生きる為に時間を共有している。


2人で会社を運営し、従業員も20人になった。


私たちは愛を語るより、他人の生活を守る義務があり、そのために大部分の時間を犠牲にしている。


毎日14時間働き、帰りに少しだけ手を繋いで散歩する。


寝静まった住宅街は人の気配は無く、世界に2人しか居ないんじゃないかと錯覚する。


道は未来に向かっていて、いつまでもずっと続くように思えるのに、別離が待っているのがハッキリわかる


だからそれまで・・・


その日まで・・・


少しでも繋がっていられるように・・・


胸が苦しくなるような感覚と同じ分だけ手を強く握る。


彼が独りになったとしても、私が選ぶ道は


私だけの人生


私はその為にたくさんのものを捨ててしまった。


たとえ彼が大好きでも


たとえ彼と一緒に居たくても


たとえ彼が傍に居ることを望んでも


引き返せない


捨てられない


私の夢


それを手にした時


それが私の幸せ


それでも愛してる。


ずっと傍にいたい


彼が言う


あなたの幸せが俺の幸せ


あなたの幸せは俺じゃない


抱きしめた手を離さずに言う


私は彼を知っている


だから思う


彼は私を離さない


だから私は悲しくなる。


どんなに心で結ばれていても、どうしようもないことがある