「別れよう」
あと10日ほどで付き合って2年になる彼女にそう告げられた。私の頭の中は大混乱だ。なんで?どうして?
つい最近、いやつい昨日まではいつも通りだったはず。喧嘩をしたわけでもないし、昨日までいつも通り私にくっついて甘えてきた。原因が全く分からない。
だから私は何も言えず、ただ黙っているしかなかった。
沈黙を破ったのは、彼女だった。
由依「…好きな人が出来たの」
頭をガツンと殴られた感覚がした。好きな人?私以外に?いやもしかしたら、由依は私のことなんて元々好きじゃなかったのかもしれない。
なんだよ。早く言ってくれればよかったのに。最初からお前なんか好きじゃないって言ってくれればよかったのに。
彼女に告げられた言葉は悲しみを通り越して、怒りに変わった。
理佐「…なに好きな人って」
頑張って絞り出した言葉は短いものだった。もっと聞きたいことはあったのに。
由依「…」
理佐「いつから?」
由依「…結構前」
理佐「由依は私のことなんて好きじゃなかったってこと?」
由依「…」
理佐「何も言わないってことはそういうことでしょ」
由依「…っ」
理佐「ほんと最低、出てって」
「…ごめんね。一緒にいてくれてありがとう」
そう言って彼女は家を出て行った。でも、家を出る前少し見えた彼女の頬には、涙が流れていた。
別れようって言ったのはそっちなのに、なんで泣いたの?
本当は別れたくなかった。彼女にとっては偽りの2年だったかもしれないが、私は幸せだったんだ。
最後に聞いた質問に嘘でも好きだったと言って欲しかった。あぁ、なんでさっき流れなかった涙が今更流れてるんだろう。もうこのことは忘れよう。
…好きだったなぁ
「別れよう」
付き合って約2年になる彼女にそう告げた。理由は
私が病気だから。
病気が見つかったのはつい最近のこと。ずっと体調が優れなくて、体に色々な異変を感じていたので病院に行った。
症状は、激しい頭痛やめまい、力が入りにくい、呼吸がしにくい時があるなど。最初は、いつもより頭痛いなぁとかその程度だったがそれが低血圧によるものではないと確信したのは、最近だった。
そして結果は、予想通り低血圧によるものではなかった。
病気の進行を止めるためには治療が必要だと言われた。でも、そのためには今のアイドルという仕事を休まないといけない。そして何より、メンバーに、理佐に迷惑がかかる。それだけは避けたかった。
理佐は優しいからきっと必要以上に心配するだろう。ただでさえ仕事で忙しい理佐に、余計な心配をかけたくなかった。その日は一日中考えた。
私が出した答えは、「別れる」
そして、ただ別れるだけではきっと理佐は別れたとしても優しくしてくれるし、心配もしてくれる。でもそれじゃだめだ。だから、私は嘘をついた。あなたに嫌われるために。
「好きな人が出来たの」
嫌いになって忘れてくれればそれでいい。私はずっとあなたのことが好きだけど、あなたが幸せになってくれればいいんだ。
私が最後に見た理佐の顔はやはり、怒っていた。そして悲しそうだった。そりゃそうだ。約2年付き合った彼女に、好きじゃなかったと言われたようなものだから。でもね、本当は好きだったよ。
いや、今でも好きだよ。
家を出る前に涙が込み上げてきて、このままじゃ本当のことを言ってしまいそうなのでそのまま家を出た。1人になった私は号泣した。自分から別れを選んだんだ。もうこのことは忘れよう。
…好きだったなぁ
続く