『灰色の虹』 貫井徳郎 | 鈴と空のブログ

鈴と空のブログ

読んだ本の紹介を簡単に。
あとは気になる人やニュースなんかについて思ったことを書こうかなと。
たまに真面目なことをかいたりもするかも。

灰色の虹/貫井 徳郎
¥1,995
Amazon.co.jp


身に覚えのない殺人の罪。
それが江木雅史から仕事も家族も日常も奪い去った。
理不尽な運命、灰色に塗り込められた人生。
彼は復讐を決意した。
ほかに道はなかった。
強引に自白を迫る刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士。
七年前、冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。
ひとりの刑事が被害者たちを繋ぐ、そのリンクを見出した。
しかし江木の行方は杳として知れなかった…。
彼が求めたものは何か。
次に狙われるのは誰か。
あまりに悲しく予想外の結末が待つ長編ミステリー。
――――― 「BOOK」データベースより


個人的評価 : ★★★★☆

5つ寄りの4つ。


やっぱり貫井さん、好きだな。


誰も救われない話で読んでてもしんどいし、
現実の社会で検察や警察の暴走が明るみに出たこともあって
リアリティも感じてしまって、怖くもある。
でも、好きだなと思ってしまう。


読んでるうちに、自分の気持ちが
復讐犯を追う刑事・山名に近づいていく感じ。


どんな理由があれ復讐や殺人は許されない、
というのが大前提にあって
それでも事の重大さに思いも至らない人間に怒りを感じたり
江木の気持ちを救いたいと思ったり。


ただ、途中の「誰も悪くない」の件は例外。
あれは共感できない。
伊佐山のしたことはどう考えても「悪」だろうに。


あの時点で全てを読んでる側と中で描かれてる山名とで
知っていることに違いがあるので仕方ないのか、とも思うけど。


山名の大前提と同様、
復讐や殺人を肯定するつもりは毛頭ないけど、
それにしてもあまりにしんどくて
そんな状況を作り出した側に感じるのは怒りじゃ済まない。


濡れ衣で逮捕されてからずっと
どれだけの絶望を味わったんだろうか、
現行犯で捕まるまでの毎日を
あの人はどんな気持ちでいたんだろうか、
明るくて幸せに溢れていた姉はあんなになるまで
どれだけ打ちのめされたんだろうか、
周囲の仕打ちや白眼視に耐えるには
どれだけの強さが必要だったんだろうか、
信じているはずなのに
周りの言葉に揺れてしまった自己嫌悪と罪悪感、
などなど、本当にしんどい。