『彼のお母さんとの日々。⑫〜韓国の少年〜』の続きです。
あっという間に、2週間の滞在も終わりに近づいてきました。
その頃にはすっかり慣れて、ここで暮らしたいという気持ちにまでなっていました。
帰国前日
シム母さんが、いつものように横にお座りと言ってくれたので座ろうとしたら、シム母さんに背中を向けて座るように言われました。
シム母さんは手に持っていたブラシで私の髪を優しくとかし始めました。
驚いた私。
でも、髪をとかしてもらうなんて何十年ぶりだろう。。
私が小学生の頃は母が髪をとかしてくれた。
懐かしい記憶が蘇りました。
シム母さんは私の髪を三つ編みのお下げ髪にしてくれました。
私はシム母さんの愛情を感じ。。
涙が溢れました。
溢れて溢れて止まりませんでした。。
疑問に思った事はすぐに質問するシム母さん。
でも、私の涙のワケは聞きませんでした。
色々な事があった2週間。
ハンドタオルをポイッとされて驚いた事
言葉の壁に苦しんだ事
怒られまくった事
シムさんのお姉さんや弟さんが毎日美味しい料理を作ってくれた事
姪っ子ちゃんとイムジン河で釣りをした事
屋上での楽しい夕涼み
トイレの鍵を掛け忘れ、シム母さんがドアを開けてしまった事
トイレのドアを閉めずに私を待つシム母さんに冷や汗をかいた事
シム母さんと一緒にテラスから山に沈む夕陽を見た事
シムさんの友達と楽しくお酒を飲んだ事
そして、愛するシムさんと過ごせた楽しい時間
書ききれないほど、たくさんの人との出会いや色々な事がありました。
帰国当日
飛行機の離陸時間は14時なので午前中には家を出なければなりません。
シムさんのご家族は、私の母や娘や息子や孫達、それぞれにプレゼントを用意してくれていました。
私の家族、それぞれに何がよいかと一生懸命考えて選んで下さったんだと思うと、とても嬉しくて胸が詰まりました。
私のスーツケースの中は愛ではち切れそうなほどパンパンになっていました。
そろそろ家を出発しなくてはいけない時間になりました。
私は拙いながらも一生懸命韓国語でお母さんにご挨拶しました。
お母さん、お世話になり本当にありがとうございました。
シム母さんは俯むき黙っています。
必ずまたここに帰ってきます。
本当にありがとうございました。
では。。行きますね。
その時、
シム母さんは私を抱き締めてくれました。
そして、
シム母さんのその目からは大粒の涙がポロポロと溢れていました。
ありがとう、お母さん。
ありがとう、シムさん。
ありがとう、韓国の皆さん。
驚き、笑い、泣いた2週間。
たった2週間前までは、韓国の田舎のここは、私にとっては未知の世界でした。
でも今は違います。
私の故郷です。
私の胸にはたくさんの愛が刻まれました。
そして、その愛は二度と消える事はないでしょう。
私は必ずここに帰ってくる。
決意を胸に、愛の詰まったスーツケースと共に日本に帰国しました。