母は
ときどき
お父さんが
好きすぎて
と泣く
だから
幸せでいてほしい
健康でいてほしい
と
子どものように
顔を
ぐちゃぐちゃにして
泣き
でも
お父さんが
先に死んだら
わたしは
その悲しみに
耐えられないから
わたしより
少しでも
後で死んでね
と父に
話している
と言う
だから
わたしは
今まで
何度も
同じ日
同じ部屋
隣りのベッドで
数時間しか
違わずに
息を引き取った
夫婦の話を
聞いたことがあるよ
と話し
いつも
お父さんと
お母さんも
そうやって
死なせてあげたい
と思っている
と話した
そして
お父さんは
何も言わないけど
きっと
お父さんも
お母さんが
可愛いすぎて
好きすぎて
残りたくないし
残されたくない
と思っている
だろうから
一緒に
死ねたらいいよね…
と言うと
子どものように
安心していた
そして
お墓の話に
なったとき
わたしたちが
死んだら
もうお墓は処分し
お寺に
供養を任せたら
いいからね
と言い
でも
お父さんとだけは
一緒にしてほしいの
と泣いていた
