生まれたのは
助産所だった
1999年の冬
助産所の畳の上で
4歳の長女
2歳の次女
夫
わたしの母が
見守るなか
息子は
生まれた
それはまるで
儀式のような
静寂で
息を飲むように
それを見守り
外では
電車の音だけが
響いていた
そして
わたしは
神様の手伝いを
しているだけや
と言う
三千人以上の赤ちゃんを
取り上げてきた
米寿を過ぎた
助産師さんの
ハッとするほど
美しい
輝くような手で
小さな小さな
息子は
取り上げられた
そして
息子が
お腹にいるときに
7回も8回も
男の子の夢を
みていた通り
生まれてきた子は
男の子で
生まれたとき
ふと
夫をみたら
夫は
静かに
涙を流し
自宅で待っていた
父は
姉、わたし
4人の女の孫が
続いたあとの
待望の男の子に
まるで
自分が
産んだかのように
喜んだ
そして
わたしはなぜか
息子の名前を
決めるとき
夫だけでなく
4才の長女と
2才の次女の
意見も聞いた
そして
夫とわたし
だけでなく
小さな
長女と次女と
4人で
息子を
凜(りん)
と
名づけた