彼の大学デビュー戦は圧巻の一言から始まった・・・。


5月の関東インカレ 10000m、当時駒大3年生トリオの宇賀地 強くん・深津 卓也くん、そして勢いに乗る星 創太くんを退けての日本人トップ、それに加え自己記録大幅更新の28分44秒台をこの大舞台で叩き出したからだった。


思わずレース後敗れた宇賀地くんは柏原くんに握手を求め一言、大きな声で「やられたね!!」と言いその場から離れた。


テレビのインタビューに対しては

「途中から楽しくて・・・、こんなめちゃくちゃ速い選手たちと走れることが本当に嬉しいことなんだなぁって事を改めて実感しました。」と笑顔で話し、改めて陸上の楽しさを体感したような印象だった。


柏原くんのレーススタイルはまさに「先行逃げ切り」の他ならない。


最初からとにかく飛ばし、自分で積極的にレース展開を作る。他の選手などは関係ない。

そして最後は粘りに粘って、自分の限界まで走りきって逃げる。


さて一体この強さはどこから来るのか?


「なぜか、怪我をしない。高校時代、けっこう何ていうんですかね・・・、補強とか・・・。一番大きかったのはタイヤ引きですかね・・・。あれけっこう腕を振らないと前に進まないんで・・・、腕振りとかも重要なので。」


では彼の大学での練習方法はどのようになってるのだろうか??


ここで意外な事実を発見する。


最後まで仲間と一緒に走って、自分から積極的に前に出ようとはしないのだ。


ここで先輩が「お前はいつかは前に出るかなと思った」との問いかけに、「前には出ないのも練習かと思いまして・・・」と。


前に飛び出す欲望は試合までに取っておき、その欲望を一気に試合に出す。


それが彼の一つの信念なのだろう。


そしてまたそれが上手く出た、駅伝デビュー戦の出雲駅伝だ。


任されたのはスピード駅伝である「出雲」では絶対に失敗が許されない1区。


しかし彼の先行逃げ切りというスタイルは全くぶれなかった。


積極的に外国人留学生のガンガくん(広島経済大)を相手にレース展開を争い、結果区間2位・チームも5位と好成績を収めた。


レース後付き添いの人に「すみません、監督。また、ワガママやりました。」


続く駅伝第2戦・11月の全日本大学駅伝。エース級が名を揃える2区への抜擢、そして東洋大学に進学しようと決めた尊敬する大西 智也くんからトップで襷を受け取った時、先輩から「好きに走って来い!!」とエールを送られた。


その言葉に左手で「行ってきます!」と合図し、先輩の言葉にまた感化されたのかこのレースも後から追い上げる竹澤 健介くん(早稲田大)・宇賀地くん・そして木原 真佐人くん(中央学院大)から逃げる逃げる逃げる。一時、彼のペースは竹澤くんが持つ区間記録のペースをも上回るものだった。


結果、木原くんと同タイムの見事区間賞を獲得。東洋大も4位と来年のシード権を獲得。


「いかに追いつかれないで粘れるかなんで・・・(笑)。とにかく逃げることだけを考えていました。楽しく走れたので良かったと思います。」


そして次は箱根駅伝という大舞台がついにやってくる、彼はどんなレースをまた私たちに見せてくれるのだろうか。


「箱根駅伝は全国の人が注目して観ている駅伝だと思います、楽しく走りたいなぁとは思っています。」


逃げ切る!そして楽しむ!!それが柏原 竜二の箱根駅伝。