「折得ても心ゆるすな山桜 さそふ嵐に散りもこそすれ」
これは神陰流・上泉信綱の道歌です。勝ったと思って油断するな、相手が反撃に出るかもしれぬぞ、勝って兜の緒を締めよ、というわけです。あるいは、上手になったからといって稽古を怠るな。怠ればすぐに技が落ちるぞ。
運動能力を見せて、この通り健康ですと自慢する人がいます。どんなに健康な人でも老いには勝てませんし、いつ病気にならないとも限りません。それに、健康自慢は病気に苦しんでいる人にたいする思いやりにかけます。
ある高齢のタレントさんがサプリメントのテレビCMで健康自慢していました。よせばいいのになぁと思っていたら、病いで倒れました。そうなんです。年老いての健康自慢はしない方がいいのです。年寄りだけではありません。なべて健康に油断は禁物です。
金持ち自慢も感心しません。豪邸や高額な持ち物を見せびらかす(きく方もきく方ですが)人がよくテレビに出てきます。盗人(ぬすっと)にはありがたい情報でしょう。油断すれば被害にかからないとも限りません。時節が変われば落ちぶれる人もなかにはいるでしょう。事業が発展して社屋を立派に建て替えた途端に景況が変わって倒産したという例は産業界にいくらもあります。今日の繁栄が明日に続くとは限らないのです。
他人より優れたところがあっても、それを表に出さず、その幸いを感謝しつつじっとかみしめ、余裕があればそっと他人におすそ分けし生きていくのが良いと考えます。
妻と話しているとき、自分ではそう思ってはいないと思うのですが、ときどき、「それって自慢?」といわれることがあります。自分でも気がつかない隠れ自慢があります。気をつけなきゃ。