5月末に、FM ヨコハマさんの番組内で、ラジオドラマ「煙草と悪魔」がオンエアされました。

聞いてくださった皆様、ありがとうございました!

こちらでは、簡単に収録を振り返ってみたいと思います。

お芝居や芸術を、より楽しむきっかけになれば幸いです。

 

ネタバレもしておりますので、見たい方だけ御覧ください。

 

 

今回は悲劇ではない物語でした。

明るいBGMをいつもより多く使っています。

 

清野さんが演じてくださった悪魔は、悪役らしいところもありますが、愛嬌がありましたよね。

矛盾する個性なので苦心してくださったのではないでしょうか。

収録では、事前に想像してもらったものをテストで聞かせていただき、少しずつ可愛い部分も乗せていきました。

 

実は悪魔は、シーンごとに少しずつ状況が違っています。

微妙に演じ方も変えてくださっていましたよね。

ちなみに下記のような感じです。

 

 

(1)序盤で登場した悪魔

 

「船の柱に尻尾をくるりと巻き付けていた」ということで、身長は小さいと考えました。

声もそれを踏まえてイメージしてくれています。

 

(2)修道士に化けている悪魔

 

途中で下船した修道士に化けています。序盤よりお兄さんのイメージですね。

ここでは、独り言と宣教師に話しかけられた時の演じ分けが必要です。

 

 

(3)退屈に悩む悪魔

 

まだキリスト教徒がいないため、一転して途方に暮れています。

「園芸でもやろう」の部分は、自然にやってもらえて効果的でした。

 

 

(4)まったりする悪魔

 

前半は可愛らしく、後半は喜劇の要素があるシーン。

笑いを意識して派手にやりすぎてしまう場合もあるのですが、良い塩梅で助かりました。

 

 

(5)花が咲いて嬉しい悪魔

 

ニュアンスが難しい場面です。

山中さんやスタッフさんが少しずつ突破口を教えてくださって、個人的には、より印象的なシーンになりました。

恋心というより愛玩するのが糸口だった記憶があります。

 

 

(6)商人と会話する悪魔

 

臨場感やテンポをキープしながら、お二人がゆっくり話してくれていましたよね。

簡単そうに見えて、実はとても難しいんです。

清野さんの緊張が解れるように、山中さんが丁寧に合わせてくださっていました。

 

 

(7)起こされて眠そうな悪魔

 

怒ってはいるものの、眠そうなところは可愛らしさも意識したいシーン。

収録では、眠い目を擦っている感じを探りました。

 

 

(8)再びの悪魔

 

以前の悪魔より体格が良い、または年齢感がある雰囲気でしたね。

ここは、後に続く山中さんの語りにニュアンスが合っている必要があります。

それを短いセリフで現すのは至難の業ですが、根気強く対応してくれました。

 

 

……と、悪魔役のポイントは、盛りだくさんでしたね!

 

喜劇的なところは、突飛にやりすぎてしまうと、それを戻すのに苦労します。

でも清野さんは(もちろん山中さんも)この勘所がある気がしました。

実際に収録では、空回りするようなテイクはなく、ごく自然に楽しいシーンを演じてくれました。これは経験上なかなかできないです。

日頃から喜劇も含めて研究しているのではないかな、と感じました。

本当にお疲れ様でした。

 

 

そして語りですが、山中さんの凄さは、筆舌に尽くしがたいです。

物語では悪魔を微笑ましく感じたり、ときにユーモラスに、ときにシリアスに進めてくださっていましたよね。

 

あれは実は、いちばん初めに、山中さんだけ単独で収録したものなのです。

清野さんの悪魔のセリフや掛け合いはそのあとに録音しました。

 

当然、語りの収録の時点で、山中さんは、どんな悪魔役になるのか、どんな方向性のお芝居なのかわかりません。

おそらく清野さんとは、初めましてだったような気がします。

 

つまり物語を深く読み込み、おそらく悪魔はこうくるだろうと明確にイメージして、それを織り込んでくださっていたということですね。技術や経験がないとできないです。

オンエアでは、登場の順番通りに収録したように聞こえたと思います。

 

今回は途中で掛け合いが入っていたのと、新人の清野さんが落ち着いて収録できるように(苦戦を防げるので相手役の山中さんも消耗しません)、という意図で、語りだけ先に収録させて頂きました。

表現力が高い方なので必ず大丈夫だと思っていましたが、想像よりスムーズに、短い時間で終えることができました。

 

文学はセンテンスが長いこともあります。それをゆっくりと、噛み砕いて読むだけでタフです。

さらに今回はユーモアも醸し、部分的には引き締めないといけません。

それをスムーズに収録できるというのは、やはりすごいです。

 

ラストの語りは、最初に聞かせて頂いたものを踏まえて、初心者の方でもわかりやすくなるよう、より噛み砕いてもらったテイクです。

現場ではリテイクの指示を聞いて、ほんの数秒から数分で新しいアイデアを組み直します。もちろん清野さんも同じ条件です。

 

(これだけでも、役者さんはすごく大変だと思います)

 

リテイクではガラッと変わっていて、収録の現場では当たり前なのですが、やっぱりすごかったです!

 

 

と、今回の感想は、このような感じでした。

番組の現場に来てくださる方々は、難しいことを誠実にやってくださる方が多いです。

気に入っているからという選出の理由ではないことを、改めてお伝えできれば幸いです。

 

最後になりますが、放送を聞いてくださった皆様に心から感謝しております。

温かい応援も伝わっています。ありがとうございます!