個人的な体験

率直に言ってしまうと、僕は長らく読書というものが好きではありませんでした。
 
小さい頃に母が買ってくれた図鑑を読み耽り、内容を暗記していたりもしていましたが、それは病弱でさしあたって特技もない子供がする親へのアピール、というようなものでした。つまり、その図鑑を読むという行為が好きなんじゃなくて、それを覚えると両親が褒めてくれたので懸命に読むことに励んだのです。小学校では貸りた本の冊数がランキングで表示されるので、僕は上位に行くために必死に借りました(ハリー・ポッターシリーズを借りては読まずに翌日に返すなどという暴挙も)。
 
そして、中学生になると本をまったく読まなくなってしまいました。たしか、中学校の図書館で借りた本は2冊だけ(宇宙に関する図解と怖い絵だったかな)で、その当時は数学や物理への興味が高まっていて、フィクションである小説などにはほとんど見向きもしませんでした。さらに、、私は漫画を愛読していましたので、「小説は漫画に比べて情景が掴みづらいし、面白くない!」という考えになっていました。
 
これでも酷いものですが、僕の読書嫌いに拍車をかけたのが「国語」でした。国語の授業は嫌いではなかったんです、友達と議論したりなんかして楽しかった記憶があります。ただ、高校受験の必須科目「国語」が私を苦しめました。現代文は読んでいて眠くなるし、古文は単語を知らないのに解けるわけねーじゃん状態に陥り、学習塾でキレて泣き出しそうになったときもありました。かなり心が荒んでますね。やっぱり受験というものは重いです。僕は出身中学校ではトップの成績だったんです。田舎の辺鄙な町にある小規模な中学なので、都市部の人たちの内情も分からないし、周りの友達に対してはプライドがあるし、両親は妥協だけは許さないと言うし……という感じで、中々に追い詰められてたんです。
 
話を戻すと、そういう重圧への苦痛が成績の伸び悩んだ国語とリンクして、いつしか国語(というか文学というもの)に苦痛を感じるようになっていたんです。案の定、本命の公立高校には落ち、私立高校に入学しました。
 
トラウマを抱えたまま過ごしていた高校一年生のとある平凡な一日。電車の中で揺られながら睡魔に襲われていると、急にある言葉が頭に流れ込んできます。「ミシマユキオ」という言葉。なんだか聞き覚えはある言葉だなあ、なんて思いながらスマホで検索してみると、男の人の白黒写真が現れました。そしてさらに読み進めると「破滅の美学」「悲劇性」「耽美派」などという見慣れない言葉がずらずらと並んでいました。意味が分からないと同時に、それらは荒んで中二病を拗(こじ)らせていた僕の好奇心を刺激しました。そして、「金閣寺」を読み(初心者が読むようなものではないです……)、よく分からないけれど激しい興奮に襲われ、そのまま文学を愛好するようになりました。
 
理系で進路を決めていて、途中で変更したいなんて言う度胸がなかった僕は、文学への熱意が冷めぬまま国立大学の理学部に入学し、今に至ります。
 
自分の過去を振り返ってみて、どうしてあんなに文学が嫌いだったのかを考えてみました。すると、「文学に関する知識がなかったこと」が原因だと判明したのです。乾いた文体、ウェットに富んだ文体、なんて今では理解できますが、当時は小説にそれぞれの文体があることすら知りませんでした。
 
そういった反省から、いつしか僕は「自分の人生をがらりと変えてしまうような作品に出会うこと」がとても重要だと考えています。だからこそ、そういったものを見つけやすくする手助けになればいいなあ、と考えてこのブログを作りました。ですので、目線は「文学なんてまったく知らない」というような人へ向けた書評となっています。どうか、このブログを見た機会に文学愛好家になっていただければ幸いです。
 

採点について

 
本来ならば作品に点数をつけるなんてことは愚行です。三島由紀夫大先生も、「小説はとまれかくまれ有機体」などと言っている通り、作品=人間なんです。よって、その存在価値というものは、どうであっても保証されるべきだと思います。
 
しかし、能力や特性を評価するということは必要ですし、人間でも同様なことを行いますよね。ですので、あくまで価値は認めた上で、この作品はこの点において優れているが、この点では駄目でしょう、なんて上から目線に言っていくつもりです。断っておきますが、あくまでも個人的な意見なので、必ずしも一般的な評価とは違う場合が多々あります。そこはご了承ください。
 
それでは、評価基準を五つ
 
1.構成  展開に工夫があるかどうか 
 
2.文章  文章が凝られているかどうか
 
3.人物  魅力的な人物がいるかどうか
 
4.主題  題材や主題に独自性があるかどうか
 
5.簡潔  内容が理解しやすいかどうか
 
※簡潔が低評価=難解であるからといって悪いなんてことは全然ありません