女子高生rihoの小説・読書ブログ

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趣味で書いた小説、私の読書記録を公開するブログです。オススメの小説があったらぜひ教えてください!!

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 改札を過ぎるのと同時に、十一月の冷たい風がわたしの首筋を通り抜けた。辺りはすでに夜の空気で満ちていて、線路沿いの街灯とコンビニの明かりで余計に暗闇を感じる。
  由佳と別れた後、いつものように家路を急ぐ。やっぱりこの季節は一段と寒い。カバンの中にしまってあるマフラーを巻こう、そう思って道の端で立ち止まると聞き覚えのある高くて透き通った声が聞こえた。
「あっちゃん?久しぶりー!!いつ以来だっけ?」
  一瞬、反応するか迷ったが、名前を呼ばれて反応しない訳にもいかない。
「申し訳ありませんが、どちら様ですか?長谷部七海さん」
「言ってんじゃん、私の名前」
てか、なんでフルネームだしーと七海が笑いながら聞いてくる。たぶん夏休みに借りてたマンガを返しに行って以来だろう。後ろで軽く結ぶことぐらいしかできなかった栗色の髪が、肩口まで伸びている。
「ナナミー、この子なんて名前なの?」
七海の後ろから僅かに声が聞こえた。七海があっ!と思い出したかのように話し出す。
「そういや二人って会ったことないんだっけー」
そういうと、七海は後ろにいた女の子を紹介し始めた。
  
  明るい茶色と黒が混ざった髪を持つ彼女は、七海のクラスメイトだという。家が裕福で小学校から私立に通っているらしく、駅から少し離れたタワーマンションに住んでいるそうだ。そう言われると彼女が着ているダッフルコートも高そうに見える。
「で、こっちはあっちゃん!」
今度はわたしの番がまわってきたらしい。
「あっちゃん、じゃなくて、綾香ね。ちゃんと紹介してよ」
「ごめんごめん!この子は岸本綾香って言って、小学校のころからの仲なんだよねー」
  ねっ、と七海がわたしに目配せをする。それに応えるようにわたしも小さく頷く。
「そうそう、七海とは家が近かったから、一緒に帰ったりとかね」
そうなんだーと茶黒の髪の彼女が興味な下げに相槌を打つ。
「アヤカってどんな漢字?」
「綾鷹の綾に、香川県の香だよ」
わたしがそう答えると七海も続けて答える。
「綾瀬はるかの綾に、香川照之の香だよ」
「字は同じだけど、なんか違うからやめて」
  そう切り返すと七海が高い声で笑い出す。わたしも、茶黒の髪の彼女も七海の笑い声に呼応するように笑った。


  三人でしばらく話した後、タワーマンションの前で別れ、七海と二人になった。わたしより少し前を歩いている七海が、わたしの方に振り返る。
「それにしてもさー、あっちゃんに会うの本当に久しぶりだよね」
わたしはまた小さく頷く。
「あっちゃんがあんまり変わってなくて、ちょっと安心した」
「それ、どういう意味?褒めてるの?」
  わたしが問いかけると七海はうーんと唸り声を出す。
「褒めてるっていうとあれなんだけど、なんとなく分かり合えてる感じがするんだよね。ほら、私の高校って私立じゃん?だから中学からの内部生とか結構いてね。そういう子たちってお金持ちの子が多いからさー、価値観があわないっていうかね」
  だからあっちゃんと話すとすごく安心するの、と七海は言う。こういうこと恥ずかしげもなく言っちゃうところが、七海らしいと思う。
「じゃあ、七海はさっきの茶黒の子ともあんまり合わない感じ?」
わたしの問いかけに七海はまた唸った。
「まあ、合わないことはないんだけど、たまに えっ、てなる時はあるかな」
でも、優しいし普通に面白いよ、と七海は慌てて付け足す。
「てか、なんで七海呼びなの?中学校の時までは、なっちゃんって呼んでたじゃん」
今度は七海の番らしい。わたしは七海の問いかけにドキりとしたが、平静を装って答える。
「もう高校生だしさ、普通、下の名前で呼ばない?なっちゃんって呼ぶのちょっとだけ恥ずいし」
「そうかなー。私にとって、あっちゃんはあっちゃんで変わらないんだけどなー。小学校のころからあっちゃんって呼んでるわけだし」
「まあ、七海の言うことも正しいかもね。
わたしもいきなり綾香って呼ばれたらちょっと驚くかも」
わたしがそういうと、七海は顔を綻ばせる。七海の笑顔をみて、わたしも少し安心した。
「そういえばね、アヤカちゃん」
「なんですか、ナナミちゃん」
七海の顔が妙に真剣な顔になる。

「キッシーのこと、覚えてる?」

part3へ続く!