〜少年の初期衝動〜
35  赤いバラ

 

ねぇ、お花屋さんの中で
何のお花が好き?

 

「うーんとね、
ボクはお花屋さんは行った事
がないけど、、、。

お花は、タンポポが好きだよ! 
どこにでも咲いていて黄色くて
可愛いでしょ!」

 

うん、どこにでも咲いてるね! 
うん、小さくて可愛いお花だね!

 

「うふふふ。
ボクのおうちのそばにも
おばあちゃんの家のそばにも
どこにでもあるんだよ!
だから自転車で走る時は
タンポポを踏まないように
気を付けてるんだ!」

 

あら、ぼくは優しいんだね!
(笑顔)

 

「うん、でも、
ずっと黄色くて可愛いのに
突然白くなっちゃうんだもん!」

 

ああ、白くてフワフワの
お帽子さんでしょ! 
あれは種なんだよ!

 

「種?」

 

うん、フーッて種に向かって
息を吹きかけると
フワーッて舞って落ちた場所に
又、花が咲くんだよ!

 

「へぇー! そうだったのかー!」

 

うん、人間がやらなくても
自然に風が吹くから
どんどん増えるんだよ!
凄い生命力があるよねー!

 

「あー!だから
どこにでも咲いてるんだね!

じゃあ、今度白いお帽子さん
になったら、ボクもフーッて
やってみる!」(笑)

 

うん、やってみて! 
あっ、でも耳の中に入ったら
中耳炎になっちゃうから
気をつけてね!

耳の穴を手で押さえて
フーッて息をかけるんだよ!

 

「ギャー!中耳炎は嫌だよー! 

じゃあ、
ボクも耳の穴を手で押さえて
フーッてやってみる!!!」
(笑顔)

 

うん、やってみて!(笑顔)

 

「じゃあ、お姉さんの好きな
お花はなぁに?」

 

私はね、赤いバラだよ!
さっき赤いバラの話したでしょ!(笑顔)

 

「うん、お姉さんのお友達
なんだよね!」

 

うん、そうなの。
でね、あとから聞いた話し
なんだけど、、、、。

うーんとね、
高校生ぐらいだったかなぁーー。

あのバラの木は最初から植えて
あった訳じゃないんだって
云う話を聞いたの。

私が生まれた頃に大ヒット
した歌で「バラが咲いた」
っていう曲があるんだけど、

ボクは知ってる?

 

「うん、知ってるよ! 
ボクもその曲好きだよー!」

 

じゃあ、
二人で歌ってみようかー!!

 

「うん!」

 

♪~バラが咲いた~ 
バラが咲いた~
真っ赤なバラが~ 
淋しかったボクの庭に
バラが咲いた〜

たったひとつ 咲いたバラ 
小さなバラで~
淋しかった 
ボクの庭が明るくなった~

バラよ バラよ~ 小さなバラ
そのままで 
そこに咲いてておくれ

バラが咲いた バラが咲いた 
真っ赤なバラで~
淋しかった 
ボクの庭が明るくなった~

♪~バラが散った 
バラが散った いつの間にか~

ボクの庭は 前のように 
淋しくなった

ボクの庭の バラは散って 
しまったけれど~

淋しかった ボクの心に 
バラが咲いた~

バラよ バラよ 心のバラ
いつまでも ここで咲いてて 
おくれ~

バラが咲いた バラが咲いた 
ボクの心に~
いつまでも 散らない 
真っ赤なバラが~♪

 

パチパチパチ、、、、

すごーい! 
私は1番しか知らなかったけど
ボクは2番も知ってたんだね!

 

「うん、昔よく歌ったから!!」

 

そうかー!
「ボクの心にいつまでも
散らない真っ赤なバラが~」
って私の心にって事なんだねー! 素敵な歌詞だね!

 

「うん。」

 

私の叔父さんに当る、
父の弟さんのK兄ちゃんが 
この歌を聞いて私達の社宅の庭
にバラの種を撒いたんだって!

K兄ちゃんは、
小さい頃に子供が出来なかった
父方のお婆ちゃんのお姉さんの
家に養子に出されて18歳に
なって戻って来て、
私達の社宅の隣のアパートに
住んでいたの。

優しいお兄ちゃんで、
近くのお菓子屋さんにいつも
手を繋いで連れて行ってもらった
記憶があるの。 

ゆっくりゆっくりと、
私が2歳~4歳の足に合わせて
くれて歩いてくれて、
何か1つお菓子を買ってくれたの。ビスケットや飴やキャラメル、
etc。

穏やかな人でいつも笑顔だった。

そのK兄ちゃんも、
多分、淋しかったんだと思う。
だから私達の社宅の庭にバラを
植えたの。

毎日毎日、水を撒いて、
芽が出て来たのを喜んで、
葉が伸びて、ずんずん大きく 
なってきたのだそうだ。 
そして蕾が出来た頃の事。

7/2、21歳の夏。
会社の同僚の方とその弟さんと
K兄ちゃんの3人で、
下田の海に行ってボートに
乗ったのだそうなの。

その日、波が高くなってきて
ボートが逆さまになって3人
とも海に落ちちゃって、
弟さんもK兄ちゃんもカナヅチで
その同僚さんは自分の弟を
助けるのに必死だったそうで

そのままK兄ちゃんは帰らぬ人
になっちゃったの(涙)
そしてK兄ちゃんが
他界した後にみごとな赤いバラ
が咲いたんだって!

バラが咲くのを誰よりも
楽しみにしていたのに
K兄ちゃんは見れなかったの。

でも、もしかしたら、
そのバラはK兄ちゃんだった
かもしれない、、、、。

そのバラに私はいつも助けて
もらったし勇気ももらってたし
初めてのお友達だった。

だから、
K兄ちゃんがそのバラだった
んだろうなぁーって思うの。

いつも、そこに居て、
私達を見守ってくれて
たんだろうなぁーって!!

淋しかったK兄ちゃんは
赤いバラを見る事が出来なかった
からバラになったんだと思う。

 

「お姉さん、どーしたの?」

 

ごめん、思い出して、
涙が出てきちゃった(涙)

 

「大丈夫?」 撫で撫で

 

ボクって、優しいんだね! 
頭ナデナデしてくれて
ありがとうー!!(笑顔)

 

「うん!(笑顔)

ボクも、ボクの心も 
淋しかったけど
いつまでも散らない
お姉さんとの思い出が
たくさんあるから
大丈夫だよー!」(笑顔)


ときめきが続く、お花の定期便bloomee(ブルーミー)

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