私が出演予定の舞台がある。
その舞台の演出、いわば、監督のお話だ。
総合演出である彼は、自分で演出をやりたかったのだと思う。それはエゴから来たものか、それともほかの理由なのか、それはわからない。
彼が演出案を作り上げ、連絡した相手は、歩くスピーカーだったので、やりたかったのは間違いないだろう。
彼は演出としてまつりあげられ、総合演出に就任した。
決起会を行い、カンパニーをいい方向へ持ち込もうとした。
そこまでは良かった。
私自身も居心地が良かった。
そこから、崩壊が始まる。
彼は、気分屋なのか、毎回稽古に来る度に態度が違う。
上機嫌の日は、猿芝居をし、盛り上げようと努力する。しかし、不機嫌の日は、周りに気を使わせる。場合によっては怒鳴る。喚く。他人に八つ当たりをする。
そしてよりにもよって、私がターゲットになってしまった。
彼の場合、レッテルを貼り、印象で物事を語る。現状を判断し、そこから臨機応変に話すことが出来ない。
その性質により八つ当たりをされ、私は稽古に行く気がなくなってしまった。
また、舞台を支える構成員としてうんざりしてしまった。
こんなことしてるくらいなら、
こんなことでストレスを溜めているくらいなら、
こんなことで泣いてるくらいなら、
もっともっと他のことをした方が良いと思うようになった。
周囲の人がだんだん遠くに感じる。
特に、サークルにかけている人が苦手になってゆく。
私はあなたたちのように、ここに尽くそうと思えない。
ここで、サークルをサボってみよう。
もうここになんている意味無い。
周囲に信用されてないのも良くわかる。
もう、もう、もう…
そう思い、サークルを飛び出す、サークルに行くまでに少し寄り道をする。
本屋に行く。友達と会う。のんびりとウィンドウショッピングをする。
そんなことしていても、心の空洞は埋まらず、仕方なく、サークルの稽古場に向かう。本当に舞台がやりたいんだ、とは思うものの、向かっている途中、苦しくて仕方が無い。
そんな苦しんで行った先では、無論、遅刻をして行っているので、文句を言われる。
当たり前だ。だが、こちらの話は1ミリも聞かず、
「お前は必要とされてるんだ、もし、社会人になって、会社とかに遅刻して行ったら首になるぞ」
いやうるせぇな。
お前に何がわかるんだよ
お前のせいでサークルに行くのにこんなにも苦しんでんだよ、死ねよ
第一に、必要としているとか心のこの字もこもってねぇし、サークルぞ?
お金を払って(部費未払いの私が言うことでもないが)やることと、お金を貰ってやることここのあいだには大きな差があることをご存知か。
ああ、知らないか、知らないのか、君達はバイトをしていなかったな。
そのくせに社畜ライフを送る私をdisるのか。クズだな。
だから頭が固いんだよ。効率悪いんだよ。
こんなことを書いているとさらにサークルに行きたくなり、ストレスが爆破しそうになる。
そんなふつふつしてても仕方ないのでバイトに行くと、それなりにたのしいし、ストレスが発散される。
いや待てよ?私は趣味を楽しむためにここにいるんだろ?おかしいだろ?
他にもっともっといいところがあるんだ。もっと居心地がよくて、もっと幸せで、もっと笑顔でいられる場所が。
ならば、ここにいなくたっていいじゃないか。
どうしてこんなサークルにいる意味があるのだろう。
でも、何が正解なんだろうか…。
そんなことを考えると、
総合演出である彼が、べったりと表面で取り繕った笑顔で、「まずは、楽しみましょう、笑顔になりましょう、皆さん笑顔が怖いですよ、足りないですよ」と指示をするのが浮かぶ。
はっきり言うと気持ち悪い。ゾクゾクする。
楽しくてリズムに乗りたい中で、軍の行進のストップをするようなクラップ、
笑顔を取り繕う者が笑顔を取り繕うものに笑うように指示を出す様子、
台本にちょこちょこ芽を出している、文学的な言葉の仮面をかぶったエゴの塊、
みんながバラバラの未来予想図を描きながら、未来を作る様子、
お互いに信用出来ず、良くしようともしない、一人一人のエゴが目立つ裏での様子…
すべてが気持ち悪くて仕方がない。
虫唾が走る。
そんな舞台を構成している一員だと感じると虚しくなる。
ひたすらに、虚無感をおぼえる。
同時に、そんな舞台に何かをしようという気持ちも、良くしようと思う気持ちも、ここにいたいという気持ちも全てがすり減ってしまう。
信用されてないのも薄々と感じ取ってしまう。
何もかもが気持ち悪く、うなぎが泳いでいるスライムの沼に方まで沈められた気分だ。
もうこれは自分のエゴのために、自分のソロ曲を、好きに歌うためだけにやっていくしかないのだろうか。
そもそも演出にアイデアを出して選択しないと行けない時点でゴミだ。クズだ。
人の心を動かすのは、人の気持ちだ。
人の心を動かそうとするには、気持ちで伝えなければならない。
見せ掛けだけで本物の笑顔を作れるのが、プロかもしれない。
しかし、プロであろうと気持ちが無ければ、いいものは作れない。片鱗に見えてしまう。
第一、私たちはアマチュアだ。
心無くして、なんの気持ちを伝えられるのか、私には皆目見当もつかない。
もううんざりだ。
公演終わったら、サークルをやめることも検討している。
そのくらいには嫌だ。
この先、どうしていこうか。