
* 愛人*

― 愛 ― 心奪われ、悶え苦しむ人の 姿 …
漢字の語源 を 調べたら そう書いていました
あたしが まだ 19才の頃 出会った 女性
あたしの勤める プレタポルテの あまり人目につきにくい フロアの奥にある カウンターによく遊びに来ていました
ある日 彼女が あたしに 告白
「知ってると 思うけど わたし 愛人 なの

この 百貨店で知らない人はいないと思うけど…ここの地主さん が 彼なのよ
あなたは 若いから わからないかも しれないけど自然に 愛したひとが 奥さんも 子供さんも いたのね
彼は 離婚しないし わたしも求めない
ただ 彼の近くにいて お役に立ちたくて、 出来ることは なんでも するの 」
にっこり笑いながら
話す彼女に あたしはどう言葉を返したらいいのか
わからなくて
ただ 見つめてた
「あなた 本当に好きな人と結ばれなさい
」鏡に映る 彼女の横顔は
いつもの 華やかな 様子はなく
しっとり 優しかった

フューシャピンクの
が 今日は似合ってなくて
ちょっぴり 女の子の顔に 見えた
綺麗に着飾って いつも華やかな彼女の手
装いに 似合わない あかぎれが 気になってた
彼が 左半身が 不自由で
毎日 マッサージと 入浴
仕事全般 ほんとに 出来ることは なんでもやってる
「愛した人を 愛するのよ
覚えておいてね
」その頃のあたしには
わからなかった けど…
今は わかります

あなたは ただ 素直に
『愛』を したんだよね
彼に 尽くしている あなたの姿は
まるで 悶えながら
叫んでいるようで
―わたしの 『愛』は 誰かさんを 傷つけてしまう 『愛』なのね でも 抗えないの ―
あなたの 『愛』は 痛々しくて
少し 羨ましい
自分の全部を
愛してる人に 捧げてる
フューシャピンクの
よりあなたの その手が
好きでした





」 


