口が先にしゃべるときには、二種類の感じがある。

ひとつは、ほんとうに言いたいことではない、自分の言葉ではないことを、

場の雰囲気でついしゃべってしまうようなとき。

そして、もうひとつは、

ほんとうは言いたくてしかたなかったことを自分で制限して言えずにいて、

誰か信頼できる人を前にしたときに言葉が生き物のように飛び出てしまうときだ。


よしもとばなな 『王国』より