あと半年ほどで、震災から10年だ。
今は、コロナだ。
見えない敵。
分断。
学校行事の縮小。
いろいろ、似ている。
実際の内容は、全然違うんだけど。
ともかく、あの日から10年が経とうとしているわけで、
表現者としては、これはスルーできないわけで。
しらかわ演劇塾でも、来年2月の公演で、震災に関する作品をやることにした。
とはいえ、コロナ。
いろんな制約がある。
そこでやることにしたのが、リーディング作品。
台本を持って舞台に立つ、でも朗読劇とはちょっと違う。
定義はあるようでないようで、どうやろうとそれは自由だ。
まず、リアルな演劇にしないことで、役者同士が距離を置くことができる。
台本を離さなくていいから、稽古時間も少なくて済む。
作品は、
篠原久美子作
「空の村号」

脚本集311 より
舞台は福島県内のとある村。
主人公は、酪農を営む家の小学校5年生の男の子、空。
美しい村を愛し誇りを持って生きる人々と、そこに降りかかる震災・原発事故。
放射能は心配ない、大丈夫だと言われた翌日に避難指示、振り回される村民。
考え方の違いからの、分断。
バラバラに離れていく、家族。友達。
そして、空は仲間たちと映画を撮る。
現実なんてつまらない、フィクションだ、ファンタジーだ!
2月の前に、11月に試演会という形で上演することに決めた。
一般クラスの大人たちは全編を。
ジュニアクラスの子どもたちは、抜粋を。
昨日は一般、今日はジュニアの稽古だった。
一般クラスの稽古では、みんな読み合わせですでに涙を堪えきれない。
そして、それぞれから吹き出す「あの頃の思い」。
一方、子どもたちは・・・
中2から小4までの六人。
みんな、もう生まれていたけど。
・・・・・・全然覚えてないし、そもそも何があったのかよくわかってない!!!
・・・衝撃的なほどに。
・・・この10年、私たちと一緒に生きてきたのに・・・!
そこで、今日は
原発について基礎的な話をした。
あまり怖がらせたくないし、今ここで育っている彼ら彼女らに自己を否定するようなネガティブな感情は飢えたくはない。
正直に、だけど言葉を選びながら、話した。
原発って何?
なんで爆発したの?
放射能って何?
風評被害って何?
除染て何?
震災、原発事故のあと、大人達が心配したこと、いろいろ。
何ヶ月も洗濯物を外に干せなかった、とか
子ども達を守らなきゃって大人たちは必死だったこととか、
今県内にたくさんある室内遊び場は、外で遊ばせられなかったからできたんだよとか、
新白河駅まえの海賊公園はなんで海賊公園ていうのか、遊具を取り替えられる前はどんなだったか、とか
小学校の運動会の様子とか、
給食の食材ひとつひとつの名前の横に「検出せず」って書いてあるプリントをもらってくる理由とか‥
実は震災前には無かったものが、今町の中にいろいろあるってこととか。
モニタリングポストとかね。
子ども達にとっては、物心ついた時からそこにあって、あるのが当たり前なんだって、こちらも気づかされた。
あの頃を思い出すと、胸が苦しくなる。
感情が込み上げてくる。
子どもたちがポカーンとしているのは、変なトラウマを植え付けずに済んだという、私たちの子育ての成果だ。
心配は親だけでいい。
子どもたちには、のびのび育ってほしい。
そう思って頑張ってきたんだから。
でも、子どもたちに最後に付け加えた。
「みんなは何にも覚えていないんだろうし、よくわからないことかもしれない。
でもみんなが大人になって、例えばどこか外国の町に行った時、アイム フロム フクシマって言ったら、向こうの人はみんなびっくりしたり心配したりするかもしれない。
世界で有名になっちゃったからね、フクシマは。
だから、その時、ちゃんと自分の考えとか状況を話せる人になっていてほしい。
だから、知って考えていこうね。」
みんな、真剣に頷いてくれた。
試演会
コミネス小ホールにて
以下の時間帯を予定。
11月11日(水) 19時半〜20:40 一般クラスA
11月18日(水) 19時半〜20:40 一般クラスB
11月19日(木) 19時〜20時 ジュニアクラス(トリプルキャスト連続上演)
無料です。
客席の数が限られるので、事前に整理券をご用意いたします。
配布開始が決まったらお知らせします。