ネタバレあります!!!



































一言で言ってしまえば、大奥みたいな後宮ものなんですけど、後宮ではなく、後宮に上がる妃を選ぶための宮でのお話。
世界観がね、人の世ではなく、人の姿も取れる八咫烏一族の物語。
う~ん、逆かな?
烏に転身するのは身分の低い者のすることで、貴族である宮烏たちはその気になれば転身出来るけど、人前にその姿を晒すのはご法度、みたいなことになってる。

四大貴族直系の姫君の集う桜花宮では、お妃候補のうら若き姫君たちの壮絶なる戦いが!
若宮(皇子さま)との対面を待ち望む彼女らと、しかしその期待をことごとく裏切り続け、一向に姿を現さない若宮。

そうして事件は起こり・・・。

いや~、いろんな人のいろんな思惑が絡みあって、起きた事件を都合良く利用することも辞さなかったり、というのはまだ予想出来る範疇ですが。

一番予想のつきにくい形で、見事に裏切られましたねぇ(^^;;
まさかそういう結末になるなんて。
読み終わって呆然としちゃいました。

一番泣けたのは、北の姫君の背負わされた、辛過ぎる宿命ですね。
一番若いのに、一番若いからこそ自分の気持ちにも気付けてなくて。
いや、気付いてもどうにもならないっていうことがわかっていたから、認めようにも認められなくて。
ものすごく痛々しかった。

そしてもちろん一番意外だったのは、東の姫君。
本人は、全部良かれと思っていて、一切悪意というものが存在しない。
だけど、悪意がないからといってすべてが許されるわけでもない。
知らないでいるということもまた、罪だと気付かされる物語でした。

↑これけっこう、見落としがちですよね~(^_^;)
そりゃまぁ、すべてがまるく収まってくれれることにこしたことはないですが、自分の言動ですべての人にハッピーな結末がもたらされるかどうかなんて、正直わからないもの。
気を付けようにも限度がありますよね。

ただ、若宮いわく東の姫君は普通だったら(彼女以外の人なら)気付いて回避出来そうなことさえそうしなかったということなので、気付くチャンスはいくらでもあったはずなのに、ということころのようで。
そうなると、本当に気付かなかったの? 気付いていてそうしたのなら、かなり腹黒いよね?ってことになっちゃいますよね(^_^;)

そうでなくても後宮なんて、みんな足の引っ張り合いで、少しでも他人より抜きんでることばかりを優先させるようなところ。
何かに気付いたら、それをどうすれば自分の利になるのか、そういうことを基準に考えていたら、誰も幸せになんかなれない。
でも、そんな中でも彼女らは彼女らなりに、自分を磨き、相手を認め、引くところは引き、押すところは押し、支えるところは支え合ってきた。
それぞれが、それぞれの一族の未来を担っていたから・・・。

そう考えるとね、女ってなんだろうって思っちゃいます。
やっぱりなんか道具扱いじゃない?
本人が若宮に恋している、東と西の姫君はまだ良い方で。
北の姫君は本当にお気の毒としか言いようがないし。

一人、この争いに不参加な南の姫君は、本心はどうだったんだろうなぁ。
彼女は出自が特殊で、彼女自身はそれを恥じたりはしていないんだけど、それでもその事実はやっぱりお后争いにあっては不利な情報で。
だけど、結果的に一番若宮のことを考えて行動していたのは南の宮の姫。

国のためでなく、自分のためでなく、若宮のため。
それって、愛じゃないの?って思うんだけど、この女性が美しいわりにサバサバとしてこだわらないキャラなので、あまり甘い雰囲気にはならない(笑)。

だって若宮の「妃にしてやってもいいぞ?私のことが好きだろう?」的な言葉に対して「自惚れるな」ですからね(^^;;
それが本心というわけでもないとは思うんだけど、何せ食えない女性なので(^^;;

でも、幼少の頃から好きで、でも自分の分はわきまえていて、というのも十分にあり得ると思うんですよね。

お前のためじゃない、と言いつつ。
・・・ツンデレ?

まぁ、ある意味一番美味しいところを持って行ったのはこの姫なのかもしれません(笑)。


そして若宮本人も、けっこうクセものです。
曲者と言うか、すっかり四家(姫君たちの実家)の言いなりになっている宗家の力を、再び取り戻すという大志を抱き、古いしきたりなんかも、必要ないと思えば参加しなかったりとか、なかなかの革命児。

単に妃になることだけを考えていた姫君たちは、若宮の本当のキャラとか知らなかったわけなので、憧れと不信を同時に募らせていたんですね~。


いろんなことがあって大混乱の桜花宮に、初めて姿を現したと思ったら、勝手に思い描いていた憧れの君と現実とのギャップに愕然、みたいな。

でも、「お前が妃になるのだよ」と、蝶よ花よと育てられてきたわけだから、それは無理からぬことだと思うんですけどね。

南の姫君だけが、若宮の本性を知っていたから、知っていて受け入れることが出来たから、もともと有利だったのかも?


若宮には激しく嫌われてしまったようだけど、私は東の姫君にちょっと同情する部分もありました。

私もよく、痛くもない腹を探られて勝手に勘違いされて、なんでかなぁ?って思うことあるから。

理論的にはそう言われても思われても仕方がない状況だったとしても、世の中いろんな人がいて、どういう気持ちでそうしたかなんて、本人にしか、下手したら本人にさえわからなかったりすると思うのよね。

勝手な憶測で、勝手に決め付けられる方の身にもなってほしい、と若宮に言ってやりたい。

まぁ、若宮も周りは敵だらけな毎日、いつ足元を救われるかわからない生活をしているんだろうから、カンタンには信じられない、というのはわからなくはないですけどね。