雨という予報は見事に裏切られ、
太陽が雲の間からほんの少しばかり顔をのぞかせる、
汗ばむほど日差しが強いわけでもなければ、
肌寒いと感じることもない最適な気温だった。
7月という多湿の時期ではあったが、
この日に限ってはあの独特の不快感に
悩まされることはなかった。
潮風が身体を吹き抜けていたからか、あるいは。
新宿から小田急線に乗って
潮風が身体を吹き抜けていたからか、あるいは。
新宿から小田急線に乗って
下北沢以降に向かうのは久しぶりだった。
都心から下ると少しずつ辺りの景色も変わってくるが、
それは私が都心から実家へと下るときに見る景色とは違う。
まぁ当たり前なのだが。
新緑の風景が目の前に広がり始めたころから、
潮の匂いを感じるようになった。
相模大野という駅で彼女と待ち合わせをしていた。
数分の差で私の方が先に着いていたが、
間もなくして彼女も現れた。
最初に発見したのは僕だったか、彼女だったか
よく覚えてはいない。
ただ、彼女が不自然な笑顔を浮かばせて
私のもとに駆け寄ってきたことは鮮明に覚えている。
その顔は照れ隠しをしているわけでもなく、
作り笑いをしていたのでもない。
以前あった時よりも痩せ細った身体と
まるで陽の光を嫌う吸血鬼のような白い肌で
駆け寄る彼女に対して一種の安心感を覚えていた。
「久しぶり。」
僕も、きっと不自然な笑顔だっただろう。
相模大野から片瀬江ノ島へと向かった。
電車の中で、僕は何度か言葉に詰まって、
右手に嵌めていた指輪を抜き差ししていた。
彼女は電車の最前列から景色を眺めていた。
青い天井に、青いロマンスカーの停まる
片瀬江ノ島駅に着いた頃はもうすでに4時近かった。
「わー海だー。テンション上がってきた。」
という彼女の言葉に高揚感は感じられなかったが、
僕はそんな彼女に安心していた。
海辺でひとしきり遊んでから、
ポケットから煙草を取り出して砂浜に腰掛け、
いつもの私たちを取り戻し始めた。
「私、アルペルガーなんだよね。」
突然なされた告白に、ふと風で膨らむ彼女のスカートを見た。
「大丈夫だよ、君は美しいから。」
「君が美しいと思う物は、一般世界では美しいと言えない。
こっちの世界に来ちゃだめだよ。
美しいものが馬鹿馬鹿しく見えちゃうからね。」
彼女の表情が、その言葉に説得力を持たせていた。
出発寸前の電車に乗り込む。
帰り道、何度か言葉に詰まった私は
また右手に嵌めた指輪を何度も抜き差ししていた。
彼女は最後尾の窓から離れ行く海を眺めていた。
その表情は行きの電車の時とは違い、
都心から下ると少しずつ辺りの景色も変わってくるが、
それは私が都心から実家へと下るときに見る景色とは違う。
まぁ当たり前なのだが。
新緑の風景が目の前に広がり始めたころから、
潮の匂いを感じるようになった。
相模大野という駅で彼女と待ち合わせをしていた。
数分の差で私の方が先に着いていたが、
間もなくして彼女も現れた。
最初に発見したのは僕だったか、彼女だったか
よく覚えてはいない。
ただ、彼女が不自然な笑顔を浮かばせて
私のもとに駆け寄ってきたことは鮮明に覚えている。
その顔は照れ隠しをしているわけでもなく、
作り笑いをしていたのでもない。
以前あった時よりも痩せ細った身体と
まるで陽の光を嫌う吸血鬼のような白い肌で
駆け寄る彼女に対して一種の安心感を覚えていた。
「久しぶり。」
僕も、きっと不自然な笑顔だっただろう。
相模大野から片瀬江ノ島へと向かった。
電車の中で、僕は何度か言葉に詰まって、
右手に嵌めていた指輪を抜き差ししていた。
彼女は電車の最前列から景色を眺めていた。
青い天井に、青いロマンスカーの停まる
片瀬江ノ島駅に着いた頃はもうすでに4時近かった。
「わー海だー。テンション上がってきた。」
という彼女の言葉に高揚感は感じられなかったが、
僕はそんな彼女に安心していた。
海辺でひとしきり遊んでから、
ポケットから煙草を取り出して砂浜に腰掛け、
いつもの私たちを取り戻し始めた。
「私、アルペルガーなんだよね。」
突然なされた告白に、ふと風で膨らむ彼女のスカートを見た。
「大丈夫だよ、君は美しいから。」
「君が美しいと思う物は、一般世界では美しいと言えない。
こっちの世界に来ちゃだめだよ。
美しいものが馬鹿馬鹿しく見えちゃうからね。」
彼女の表情が、その言葉に説得力を持たせていた。
出発寸前の電車に乗り込む。
帰り道、何度か言葉に詰まった私は
また右手に嵌めた指輪を何度も抜き差ししていた。
彼女は最後尾の窓から離れ行く海を眺めていた。
その表情は行きの電車の時とは違い、
少しだけ自然な表情であった。
