それは、もうすぐ20世紀が終わるという年の冬でした。

 


その日は夕方でした。ぼおっと夕空を見ていたら突然「時が来た」という声がはっきりと聞こえて来たんです。その声は頭上やや左よりから入ってきました。

 

その頃の私は、結婚して10年、8歳と6歳の息子を育てていました。

 

夫が仕事のストレスから情緒不安定になり、夜通ししゃべり続けたりイライラして子どもたちに物を投げつけたりしたので、子どもたちを守るために夫の機嫌を損ねないようにして生活するのに必死でした。夜通ししゃべる日はずっと話を聞いて、明け方に夫が落ち着いてから少し寝て、それから子どもたちのことをしてパートの仕事に行くという休みなく働く生活が続き、体調を崩してしまい不整脈になった私は、子どもたちの人生を守るためにはこの生活を終わらせなくてはと決意しました。

 

 

でも、いつ行動すればいいか、そのタイミングがわからなかったんです。

 

夫の情緒不安定には波があり、突然押し黙ったり饒舌になったり、物を投げつけてきたりしたかと思えば、噓のように穏やかになったりしました。

 

 

その日、パートの仕事帰りに薄暗くなった空を見ていたら、その声は聞こえてきたんです。

 

「時が来た」

 

 

 

あ!ゴーサインが出た!

 

咄嗟にそう思いました。

 

 

その夜から、夫は普通の人になっていました。

 

私は,このままでは家族みんながダメになってしまうということ

子どもたちは私が育てるから、あなたは自分を立て直すことに集中してほしいということを話しました。

 

夫からは「家族そのものがストレスだ」と言われました。

 

その言葉で離婚は決定しました。

 

 

 

それから、養育費の話し合いなどがスムーズに進みました。

 

夫が安定しているうちにと、最低限必要なものだけを荷造りし、ひとまず実家宛に発送しました。

 

 

 

そして、声を聞いた日から1か月後には子どもたちとともに新天地にいたんです。

 

その日は雪の降る日でした。リュックを背負って両手に荷物を持った母子3人の姿はまるでドラマのワンシーンみたいだなと可笑しくなったことを覚えています。

 

 

 

今でも、雪が降るとあの時の情景を思い出すんです。

 

 

 

 

「時が来た」という声はまさにベストタイミングを知らせてくれました。

 

見えない世界からはっきりと聞こえて来た、私の人生を変えた声でした。