人には向き不向きがあるだとか、得意不得意があるだとか、小説や漫画でそんな台詞をよく見かけます。

思い返してみれば僕自身 小学生の頃に言われたことがあるし、友人が言われているのを耳にしたこともあります。先生がクラスメイトみんなの前で、そんなスピーチをしていたような記憶すらあります。この「人には向き不向き~」「得意不得意が~」というのは、一聴するといい言葉のようにも聞こえるし、言っている側もさもポジティブな言葉のように使っていますが、この言葉が使われるタイミングの多くが、「できないこと」を正当化するための言い訳に過ぎないように思います。「向き不向きがあるんだから、できなくてもしかたないよ!」「得意不得意があるんだから、得意なことを頑張ろう!」なんて、“できない” ということを正当化しながら、苦手から目を背ける。こんなクソみたいな言葉を幼少の頃から囁かれてきた僕みたいな人間は、そりゃあどうしたってクソみたいな人間になりますよって話です。

というのもですね、僕はダイエットができない。全くできない。こんなことを言うと、「痩せないのはただ自堕落なだけだろ!」「続けられないのを何かのせいにするな!」なんて罵詈雑言が、ここは西武ドームか!ってくらい飛び交いそうではありますが、本当にできない。全くできない。痩せている人、太っていない人、太っていたけれどダイエットに成功した人なんかに言わせてみれば、本気で痩せる気がないだけだろなんて話かもしれません。しかしね、本当にできないんですよ。本当に。

僕のことを見たことがある方はわかると思うんですが、僕は太っています。もっと言うと、例年 少しずつ太っていっています。僕のことをしょっちゅう見ている方は気づかないかもしれないですが、本当に少しずつ、長い年月をかけて少しずつ太っていっている。経年変化。経年変化 丸出し。ちょっとずつ、ちょっとずつ、日に日に僕の体積は増えていっています。

決して僕だって運動をサボっていたり、食事制限を怠っているわけではありません。最近は積極的にランニングしたりしているし、家でできる程度の筋トレにも手を出しています。食事に関していえば菜食中心に切り替えながら、キチンと栄養が偏らないように気を配っています。ひとつの栄養素ばかりを摂取したり、逆に何かを極端に避けたりはせず、健康な痩せ方ができないかと心がけている状態です。しかしながら体重が減らない。増えないものの、決して減らない。今度は完全なる横一線。その善し悪しに関わらず経年変化すら止まりました。

僕はもともと脂肪だけでなく、筋肉も付きやすい体質です。そしてそれが落ちづらい。学生時代 水泳と剣道をやっていたんですが、筋トレなんぞ1ナノもしていないのにも関わらずガタイはよくなっていったし、筋肉もめちゃめちゃ付きました。そしてそれは今も衰えることを知らず、腕の筋肉なんかは剣道のおかげもあってパンパン。むっちゃパンパン。筋トレを趣味としている友人に「本当に筋トレとかしてないの!?」「本当に!?」と、驚かれながらも疑われたことすらあります。「仮に筋トレをやっていたとしてそれを隠す意味がどこにあるんだ」「筋トレ好き界隈では筋トレせずに筋肉が付いた人間は神格化されるのか」「“隠れ筋トレ” はタブーなのか」なんて思っていましたが、とにかくそれくらい僕は筋肉が付きやすい。しかし前述のとおりそれは脂肪にも言えます。脂肪も付きやすく、落ちづらい。こんな僕が運動部を引退したら、そりゃ「新たに付く筋肉量」より「新たに付く脂肪量」の方が上回り、次第に太っていくことは自明の理。火を見るより明らかです。ただそうは言っても筋肉もあるので、一定のエネルギー消費もしている状態。なので一気に太ることはありません。あくまでジワジワ。ジワジワと太っていくのです。

この方程式でいくと、今現在、学生時代と同じ量の運動をこなしたとしても、そりゃ体型が横一線になってしまうのもわかります。今の僕が痩せるには、学生時代以上の量の運動をこなすしかありません。しかしながら零細ながらも芸人として活動しながら、生活のためにバイトをしている今の僕の生活内で、学生時代を上回る運動は絶対にできない。“絶対” なんて有り得ないこの世の中で唯一の “絶対” だと行っても過言ではありません。

ということで僕はダイエットができない。僕には向いていない。しかしながらそんな僕にも得意なことはあります。それは料理を美味しく食べること。なのでこれからも一緒に食事してくれる人や作ってくれた人を幸せにできるように、なんでも美味しく食べようと思います。とはいえ僕は食べ物の好き嫌いがハチャメチャに激しい人間です。ですが食べ物の好き嫌いにも得意不得意はあると思うので、それもコミコミで咀嚼して飲み込んでいこうと思います。あー今日もご飯が美味い!










BGM:)戦う君よ/THE BACK HORN