来たる2月14日。


この日、待ち合わせ場所に現れたのはまぎれもなく鷲男だった。しかも30分遅れて来やがった。普通に待った。



いや…まぁいーよ。それはいーよ。遅刻は俺の十八番だしな…




でもなんでお前スーツ。




わからん。どういうことだ?本当にバレンタインドッキリなのか…?会わせたい人…?やっぱり女の子が来てチョコっとラブされるんだろうか?それにしてもなんでスーツ?

鷲尾「お前に、会わせたい人がいる。」


会わせたい人…?どういうことだ…?



俺は考えていた。しかし考えれば考えるほど鷲男の意図は読めず、俺は混乱した。

紫式部的に言えば、俺のボブヘアーは千々に乱れていた。


「誰?会わせたい人って。」


鷲男「俺の尊敬してる人。まぁ。取り敢えず行こうや。案内するよ。」


鷲男はそういって入り組んだ商店街を慣れた足で歩き始めた。


そして商店街のはずれにある二階建のちょっとお洒落な灰色の建物の前で立ち止まる。



なんだここ。あぁもう!全然意味がわかんねーよ!


しかし、俺の野性の感(ワイルドセンス)はそんなに鈍感じゃなかった。


ワイルドセンス「バレンタイン全然関係ないよ!」


いささかショックだったが、今更どうしようもない。


そこは、お食事をしたりお茶をしたりするような場所ではなく、どうみても何かの会社だった。しかも怪しい会社だった。



くそーぅ!鷲男のやつ!この日を利用して俺をここに誘導しただけじゃねぇか!


あいつバレンタインなんて知らないみたいな面しやがって!ぜってー確信犯だ!何企んでやがる。


あれ、でもこのビル、入り口にシャッターが降りてる。


鷲男「あ、地下だから問題ないよ。」


…地下?俺達は脇道から地下へとつづく階段を降りた。


下に番号入力でロックを解除する柵があった。



ピッピッピッ…カチャッ


ギィ…



鷲男「入って。」


俺「…おう。」





ギィ……ガチャンッ!



内側からロックされたー!


いやなんだこの柵。内側にも番号入力のやつついてるじゃん。なんで。ねぇなんで。





鷲男「言っておくけど。」


鷲男の表情が固くなる。



鷲男「俺は五代にあの人を紹介したいだけだから、


スーツは、買わなくていいから。」





\(^O^)/

「五代!久しぶり。元気にしてた?いきなりで悪いんだけど2月14日、暇??」


それは高校時代に一瞬バンドを組んだことのある友人からの電話だった。


彼の名は鷲男(わしお)。背が高くて高校生の頃からポールスミスで身を固めるお洒落さん。


才覚に富み、奸智に長ける男。俺のような落ちこぼれからすりゃぁ、少しばかり遠い存在。

彼はほとんどの学生が内部進学するうちの学校から外部受験ででていった。

周りに遊んでばっかりの人間しかいない悪状況の中で受験を成功させたのだ。


そしてレコード会社を立ち上げて僕らのバンドをデビューさしてやる!とかいうアメリカンドリームを掲げて僕らの前から姿を消した。


それから一年近く音沙汰無かったので、いきなりの電話に俺は面食らっていた。


「で、暇なの?2月14日。」


一週間後だった。


俺「いや、こんな土壇場で言われてもね
……暇だけどね


むしろ全然問題なかった。俺はプロの暇人(予定がないので誘われたらすぐに駆け付けるめっちゃ良い奴)なのだ。


というわけで、バレンタインデーはある意味終わった。


俺「で、何すんの??」


鷲男「秘密」


俺は思った…。


…ドッキリだ…これは行ったら実は女の子がいてチョコっとラブされちゃうドッキリだ…!


でも一体誰が…?まさか、あの時一緒にバンドをやっていたドラムの子!可愛いけど足の筋肉なんていうかビーバー的な子!?



……全然アリだ


俺は高鳴る高揚感を押さえ、平然と答えた。


「…まぁ、いいけど。俺どうせ暇だし。」


鷲男「良かった!じゃぁまた14日に!」


俺はやはり甘ちゃんだった。本当に笑っていたのは鷲男のほうだったのだ。



つづく
次回、ピリオドの向こうへ!(人生終了的な意味で)

「これだけは人に負けないものってある?」

大学2年の時、ゼミの面接で、こんな質問をされた。俺は気色満面の笑みを浮かべ、こう答えた。


「不幸っぷりです!」(落ちた。)


世の中には、絶対的に不幸なやつがいる。そんな奴にかぎって、要領が悪かったり、ちょっとひねくれてたりする。無論、始めからひねっくれていたわけではないが、吉田拓郎の歌にもあるように、駆け引きのうまい男ばかり出世する世の中で暮らしていると、要領の悪い人間はダンダンとすねてしまう。


俺もそんなものぐさ野朗の一人だ。

自分がダメ人間だって事は重々自覚しているし、もういっそのこと場末のパブとかで格好良く堕落したいと思っている。「ママ、バーボンちょうだい」とか言いたい。それにもういっそのこと、寂寞とした山とかにこもってやりたいと思っている。「岩に染み入る、蝉の声」とか言ってみたい。



しかしそう拗ねてもいられなくなった今日この頃。だって今年、就職活動が始まろうとしているのだ…!

子供の頃、絶対に到達しないと信じていた未来が、ついに来てしまった!





俺の名前は、五代友作。20歳で、現在大学3年生。

このブログは、チャリに乗れば骨折し、軽ーくマルチ商法に騙されて、留学すればボコボコにされる、そんなスチャラカ大学生の、就職奮闘記である。


まずは、俺の過去から書いていきたい。