2007年8月に、姉が緩和ケアの一環として、臨床心理士さんと作成した『ディグニティ・セラピー(愛する人に残すメッセージ)』が、臨床心理士さんから届きました。
全てを紹介することは出来ませんが、一部皆様にもお伝えさせていただきます。


私が生涯で一番生き生きしていたのは、病気になる前の29歳から31歳くらいの頃です。
税理士の試験が終わり、いろいろなことが少し落ち着いた頃でした。
30歳のとき、彼に出会い、海や山へドライブに行ったり、温泉や海外旅行に行ったりして、これまで経験できなかったような自然を感じることが出来ました。
長い期間ではなかったけれど,彼と一緒に過ごせて、知らなかった世界を知ることが出来て幸せでした。

中略

今は自分自身が辛いけれど、長い人生で考えたら、割合としては幸せな期間の方が長かったと思います。
病気を告知された後とか、手術の後、今の状態は辛いけれど、この病気になった2年間のうち1年は、化学療法をしながらも彼と出かけたり、楽しいこともたくさんありました。
もし、私が死んでしまっても、最期が辛いとずっと辛い一生だったと思われてしまうから、そうではなかったことを伝えておきたいです。33年間、本当に幸せだったし、それは家族のお陰です。

中略

病気になってから、生活が違ってしまうから、元気な頃の友達とは疎遠になってしまって、寂しかったです。
でも、たまにメールをくれる友人たち。単に『頑張って』でなく、良くなることを信じていると言ってくれて本当に嬉しく、その言葉に励まされ力をもらっています。
インターネットのブログを通して、沢山の友達に心配してもらい、いっしょに頑張ろうと言ってもらったり、励ましてもらったり、一人じゃないんだと感じられるいい関係があるのが幸せです。
特に、入院してから実際に面会に来てくれた、ねこたさん・すみちゃん・桜たん・シホンさん・riderさん。本当に力付けられて感謝しています。

中略
愛する人たちに対する私の希望は、自分の身体を大切にしてほしいと言うことです。生活習慣病などは予防できるし、健診などはどんどん受けて欲しいと思います。
お父さんもお母さんも、本当に身体を大切にしてください。


私が学生の頃に読んだ本の中に、好きな言葉があります。
宮本テルの『春の夢』にある、「勇気と希望と忍耐があれば、どんな山でも乗り越えられる」というものです。
特に病気になってからは、私は「希望」と言う言葉を、意識するようになりました。その言葉のもつ意味の大きさ・・・
いろいろなことに対して、希望は持つべきだと思うし、皆も希望を持て生きて欲しいと思います。
でも実際にはこの全てを兼ね備えていることは難しいと思います。この言葉の重みに押しつぶされないように、時には力を抜くことが必要です。

中略

最後に心理士さん
病気になったときから、ずっと手紙を書き残しておきたいと思っていました。でも、元気な頃はそこまでするのが難しく、病気になってからは書けなくなってしまって、
思っていることを話せない・言えないもどかしさを感じていました。
その願いが、こういう形で実現できて、今本当に気持ちが落ち着いています。

これは、私が生きていた証拠です。

以上



中略の部分は、家族などに宛てた文章が綴られていました。
ここに、数名名前を出させていただきましたが、名前を出してない方々にも、沢山支えられていました。
姉の荷物を整理していたら、ある日のブログコメントが印刷して保管されていました。それには、コメントして下さった方の、年齢や住んでいる所、病名や治療について、など皆様一人一人の情報を書き込み、蛍光ペンで線が引いてありました。
特に、落ち込んだとき、この様に皆様の言葉とそれぞれの状況を把握しながら、何度もくり返して読んでは、心を落ちつかせていた様でした。


彼の事ですが・・・
彼は姉と旅行した場所を、一人でゆっくりと周っているようです。先日、そのお土産を持って姉に逢いに来てくれました。
抱えきれないほどのお土産を手に・・・そして、姉との旅行の思い出話をしていってくれました。
彼も、一人で頑張っています。色々な思いがあるかもしれませんが、私はこうしながら、彼が少しずつ心の整理ができることを心から願います。


私は、姉が入院していた病院の看護師です。去年の9月から産休・育休で今月22日から職場復帰の予定でしたが、1ヶ月のお休みをもらい、実家の片付けや姉の荷物の整理をする予定です。
この場を借りて、姉の残した言葉など、十分に皆様に報告することができました。
この辺を区切りに、私がこのブログを更新していくことを止めようと思います。
このブログを、何らかの形で社会に投げ出し、多くの方に見ていただけるように、ただ今検討中です。
今まで、沢山の方に見ていただき、そして沢山の励ましをいただきました。本当にありがとうございました。
またいつか、どこかで皆様に会えることを目標に、今日のこの記事で更新をすることを終わりにします。
ありがとうございました。  
m(_ _ )m