へいちょー石川の自作小説 -4ページ目

へいちょー石川の自作小説

ライトノベル調の自作小説を投稿しています。まだ完成度が低いので人にみられたくありません。
ブログとして活用していません。

ここはどこなのだろうか。
暗闇しか見えない。黒以外の色が存在しないような世界だ。気味が悪い...。
ここは夢なのだろうか。
手を伸ばしてみるが、何の物体にも触れることはない。
足も動かしてみるが空気らしき物を蹴っているだけだ。
体を動かそうと試みるが、何かに呪縛されているかのように不自然な違和感があり、微動だにしない。

非常に不思議な世界だ。

そういえば、俺は意識を失ったのか。その時の記憶は断片的で朧(おぼろ)だったのでいまいち思い出せない。

それからどうなったのだろう。

今はこうして夢なのか現実なのか釈然としない空間を浮遊しているわけだが...。
すると、一つの星のような物が瞬いてこちらへ向かってくる。俺に近づくに連れて徐々にその大きさは増す。
俺は右手を差し伸べ、それを握る。刹那、暗闇から解き放たれ、光に包まれた果てに一つの病室へと飛ばされる。

そこには俺と妹が居た。

妹が病床に横たわり、胸を上下に激動し、苦しみの声を漏らして居た。
当時と全く相違点がない。妹はもがき苦しんだ挙句、無残に死を遂げた。
それは過去にあった事だ。
今は死の直前の妹なのだろう。
夢で当時のままの場面を見るのは果たして何年ぶりなのだろうか。これには散々心を蝕(むしばめ)ばめられた。
しかし、今となってはもう悟りを開き、後悔の念を晴らそうと目標に向かっているのだからなんともない。
妹は依然と苦痛に耐えている。
そして、そこにいる俺はただ眺めるだけだ。

突如と妹の声が聞こえなくなる。
息の根を引き取ったのだ。

途端にそこにいる俺は即座に直立不動。そして盛大に哄笑する。

「ひゃっはっはっはっ!!」

いや....俺はこんなことをしていない!

「ひゃっっっっっはっっ!!!!はっっ!!!はっ!!ひゃっ!」

やめろ....。俺の記憶を改竄(かいざん)するな。
こんな出鱈目(でたらめ)な虚偽を俺に見せるな...。

しかしこれは試練の一つだ。
今まで犯した罪の試練。
乗り越えなくてはならない試練。

そこの俺は手を腹部に抱え、先ほどよりも哄笑している。
しかし少し経ったあと、それに飽きたのか笑うのを辞める。

そして、死んだ妹だけを凝視する。

辺りを見回したあと、不敵な笑みを浮かべる。

何をやるつもりだ....。

すると、病床の妹に向かい手を出す。妹の病服の裾に右手を潜り込ませる。
それと同時に妹の上に跨(またが)る。
顔を妹の純白の顔に近づけ、頬を鼻孔で嗅ぐ。そしてまた、非情で悪態な笑みを浮かべ、手を病服の中で掻き回す。
妹は当然息がないので、抵抗し反発することも不可能だ。ただ嬲(なぶ)られ弄(もてあそ)ばれる。

なんなんだこれは...。

俺はこんなことをしていたのか...。

この夢の核心は理解している。
全て作り物の幻想だ。虚偽だ。
記憶に欺瞞されているに過ぎない。
だが、俺は傀儡(かいらい)かのように思考を操られそれは自分がやったと思ってしまっている。
そこにいる俺は、ついには妹の病服を脱がせる。そして病気によって衰弱した、か弱い純白の肉体が露わになる。肉はほとんど張り付いてなく、骨と僅かな表皮だけで体が構成されている。

そしてさらに、下腹部へと手を潜り込む。

ダメダメダメ!ダメダメだダメ!ダメだダメ!ダメだダメダメだ!!

俺は目を閉じようとしたが、瞼が凍結しているかのように微動だにしない。
目前では、妹を嬲り回している俺の姿が映っている。

あ、、、あ、、、。
あああああああああああああ!!

俺は注視するしかなかった。
その悲劇を...。

俺はこんなことしてないんだああああああああ!!
あああああああ!!

俺は耳も塞ぎたくなったが、動かない....。
だめだ...。
非情な光景が目の前で繰り広げられていた。俺はそれを隅々まで直視するしかなかった。

悪態極まりない地獄絵図。

しかし、それは自分自身だ。

自分がその地獄絵図を製造した張本人だ...。
あああああ。

何てことを俺はしていたんだ。
俺はこれをずっと隠して...。

もう、どれが本当の記憶なのか俺にはわからなかった。場を諦観し、苦痛を負うだけの苦の連鎖を堪能するだけだった。何て地獄なんだ。

混沌な記憶の中を彷徨い続ける。

そこでふと思う。
本当何て物はないのではないかと。
俺は今まで自分を騙し続けた。
本当の自分などという者は存在しなかったのではないのか。

全てが虚偽。

俺の中には本当、真実などという確定的な顔はないのだ。
全て虚偽で構築され、虚偽に操られている傀儡こそが、俺という存在なのではないか。

しかし、それも虚偽なのかもしれない....。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


多種の刺激臭が充満していて、それが鼻腔や喉を痛める。
そんな部屋で一人の医師は苛立ちながら、来客人を待つ。

「まだ来ないのか...。」

ドアにノックがかかり、医師は気のない返事をすると一人の女性が入ってきた。手には一人の男が横たわった車輪付きの病床を押していた。

その名前はアレク・アンドロメダという。

つい先日帝国中の未確認物体とされ、いち早く解剖するように国の偉い人からの医師への命令があった。

「用意できたか。始めるぞ」
「はい」

医師は短刀を懐から取り出す。
アステカ帝国から輸入された鋼鉄製のナイフで、切れ味抜群の品だ。
医師は一切の躊躇を見せず、ナイフを手に持ち、グレンの腹部に差し込む。
少量の鮮血が流れ出て来る。

その刹那、窓が何者かに割られる。

ガラスの甲高い粉砕音が鼓膜を刺激する。医師は一瞬驚愕したが、直ぐに冷静になり、辺りを警戒する。

「誰だ!」

返事はない。

追い打ちのごとくさらに、室内が揺れ始める。

医師とその助手は激しい振動により平衡感覚を維持できず、膝から床に着く。

「キャーーー! 」
「身の安全を最優先するんだ」

医師は的確な指示を出し、直ちに身を守れる物を探すため、地に這いつくばる。

その隙に窓から漆黒の人影が室内に侵入する。

何の物音もしなかったので、二人は依然として、這いつくばったままだ。
その人影は瞬時に横になっていたアレクを抱え上げ、踵を返す。
一連の動作を短時間でこなし、何事もなかったかのように計画は終わった。
揺れが収まった。
室内は乱雑に成り果てていた。
そして医師は危険が逃れたと判断し、腰を上げる。それに続いて助手も起き上がる。

「おい!どういうことだ!」

病床で睡眠していたはずのアレクの姿は消え、そこには何も残っていなかった。
医師は想定外の事態にパニックになる。

腹いせに薬品が収納されている棚を蹴る。棚が壁に当たる。
そして壁に跳ね返り、医師の方向へと少年二人分の高さの棚が倒れて来る。

医師は予想だにしないことが起き、対応することができずにその巨大な棚に押しつぶされた。

不気味な音がなり、血飛沫が舞い上がった。