日野自動車はエンジン認証不正問題で、米国当局に約1800億円の制裁金を支払うことに合意しました。しかし、日本国内では金銭的な制裁は一切なし。このような「海外では高額な賠償、日本ではほぼゼロ」というケースは他の日本企業でも見られています。
この記事では、なぜ日野が米国で多額の制裁金を支払い、日本では負担がないのか?その背景にある「訴訟制度」「証拠開示」「企業対応」の違いを詳しく解説します。
1.米国と日本で制裁の差が生まれる理由
①訴訟制度の違いー米国には「クラスアクション」がある
米国では「クラスアクション(集団訴訟)」が一般的です。
・少人数の原告が同じ立場の被害者を代表して訴訟を起こすことが可能。
・判決は原告だけでなく、該当する全員に適用されるため、企業は数百億円規模の賠償を支払うことがある。
・被害者が多いほど賠償額が跳ね上がる仕組みで、日本企業も巨額の支払いを余儀なくされる。
一方、日本ではクラスアクション制度がないため、
・個人が高額な訴訟費用を負担する必要があり、裁判を起こしにくい。
・その結果、日本国内では企業に対する賠償請求がほとんど発生しない。
②証拠開示制度の違いー米国の「ディスカバリー制度」
米国では「ディスカバリー制度」という強力な証拠開示の仕組みがあります。
・訴訟当事者は裁判で必要とされる証拠をすべて開示する義務がある。
・企業の内部資料が裁判で使われるため、株主や消費者が不正を立証しやすい。
日本にはこの制度がなく、原告は企業の不正を証明するための証拠を自力で集めなければいけない。
・企業側が情報を隠しやすく、裁判で勝つことが極めて難しい。
・そのため、日本では企業の不正に対して株主が訴訟を起こすこと自体が少ない。
③企業の対応ー日本企業は海外では早期和解、日本では放置
日本企業は米国などで訴訟を起こされると、
・長引く訴訟コストを避けるために早期和解を選ぶことが多い。
・訴訟が拡大すれば数千億円規模の損害賠償につながる可能性があるため、一定額を支払ってでも決着をつける。
一方、日本では訴訟自体が少なく、企業側も積極的に賠償することはほぼない。
・実際に日野自動車のエンジン不正問題では、日本国内での金融的制裁はゼロだった。
・これは過去のトヨタのリコール問題でも同様で、日本の株主は賠償を受けられず、海外の投資家だけが救済された。
2.なぜ日本では訴訟が起きないのか?
①株主が訴訟を起こすハードルが高い
日本でも証券訴訟(企業の不正による株価下落に対する損害賠償請求)は可能だが、
・訴訟を起こすには莫大な費用がかかる。
・企業の不正を証明するには内部資料が必要だが、日本ではディスカバリー制度がないため証拠を集めにくい。
・その結果、日本の株主は「どうせ勝てない」と考え、訴訟を起こさない。
②消費者訴訟の制度が不十分
3.今後の課題ー日本でも制裁を強化すべきか?
このような状況を受け、「日本の制裁は甘すぎる」との批判が高まっている。
東北大学の森田教授は「日本も不正に対する制裁を強めるべきだ」と主張しているが、一方で米国型のクラスアクションには強い反発がある。
>過剰な訴訟リスクが企業の競争力を奪う
>企業が潰れるほどの賠償金を支払うことになる可能性がある
東京大学の後藤教授は「役員が不正を放置したのに、最終的に会社が賠償金を払うのは不公平」と指摘しており、単純にクラスアクションを導入すれば解決する問題ではない。
海外と比べて日本では企業の不正に対する制裁が甘いのは事実。「不正を防ぐために厳しくすべき」という声と「過剰な賠償は企業の負担になる」という意見のバランスをどう取るかが今後の課題となる。
