アオハル・ポイント
著者 佐野徹夜
あらすじ
人には「ポイント」がある。ルックス、学力、コミュ力。あらゆる要素から決まる価値、点数に、誰もが左右されて生きている。人の頭上に浮かぶ数字。そんなポイントが、俺にはなぜか見え続けていた。
例えば、クラスで浮いてる春日唯のポイントは42。かなり低い。空気が読めず、友達もいない。そんな春日のポイントを上げるために、俺は彼女と関わることになり――。
上昇していく春日のポイントと、何も変わらないはずだった俺。これはそんな俺たちの、人生の〈分岐点〉の物語だ。
(以上メディアワークス文庫より)
はじめに
アクセス頂きありがとうございます。
友人からお借りして、佐野徹夜さんの『アオハル・ポイント』を読んだので感想を残します。
以下ネタバレを含みますのでご注意ください。
私が佐野徹夜さんの本を読むのは、『君は月夜に光り輝く』に続いて、2冊目です。
こちらは、気になっていた作品が映像化に伴い、大きく取り上げられているのをきっかけに、読むことを決めた作品でした。
近々読み返しするつもりなので、その時に詳しい感想を残しますが、お気に入りの本の1冊でもあります。
なので今回も、期待を込めて読み始めました。
最初は外出時の隙間時間を利用して読み進める予定でいたのですが、気づいたら帰宅してからも読み進めてしまうほどのめり込んでしまいました。
どんどん時間は進んでいき、面白かった!と本を閉じたのは、その日の夕方でした。
私の予定は大きく狂ってしまいましたが、とても面白く、少し考えさせられる部分もあるお話でした。
設定が面白い
突然ですが、皆さんは”人のスペック”について考えたことはありますか?
大なり小なりあるとは思いますが、”この人スペック高いなー。” くらいは誰しもが思ったことがあるのではないでしょうか。
そんな、おそらく多くの人が1度は考えたことがある”人のスペック”。
このお話では、”人のスペック”を「ポイント」という形にして明確にしています。
ここで重要なのは、「ポイント」として表される要素です。
その人の容姿や肩書き。
「コミュ力」の高さや「空気が読めない」等の他者から見た情報であることです。
性格やその人の考え方や行動のような他者が実感しにくかったり、できない要素は「ポイント」として表れないのが注目ポイントです。
この身近にあるけど曖昧なものが明確にある世界が、斬新で面白い!と思いました。
読みやすい
「ポイント」が見えるこの本の主人公の青木からの視点でのみお話が進むので、とても読みやすくなっています。
青木は「ポイント」に加え、その内訳までもが見えることもあり、「ポイント」に囚われて過ぎています。
その青木視点で進むから、「ポイント」と設定が飲み込みやすいです。
青木の人の気持ちに鈍感なところや突拍子もない行動に、ムズムズしたりびっくりしたりしながらこの本を楽しめると思います。
また、本を普段あまり読まない方にも読みやすい形式だと思います。
もしブログをここまで読んでくれた方の中で、読んでない方がいらっしゃれば、まだ間に合います!読んでからもう一度このブログに戻ってきてほしいです。
成瀬がかわいい
まず、成瀬心愛(なるせここあ)という人物について簡単に残しておきます。
彼女は「多分学年で1番」かわいいと称されます。
また、「成瀬はクラスの中でも中心人物、キラキラ輝く学生生活のヒロイン」とも表されます。
そんな彼女に青木は恋心を抱いています。
そして、中盤で分かることですが、彼女もまた青木に恋心を抱いていました。
所謂両片思いの2人ですが、「冴えないだけが特徴」と自分を客観視する青木にとって、彼女は「釣り合わない。」、「ポイントの差がありすぎる」と尻込みしてしまう相手でした。
2人には、時々、昼休みに視聴覚室で話すという接点がありましが、青木は「それ以上のことは、何も望まない」と諦めていましまっていました。
前置きが長くなってしまいましたが、鈍感な青木に成瀬がアピールするのですが、それがめちゃくちゃかわいいです。
1.少女漫画を好きだと嘘をつく
2人の接点を作ったのは、少女漫画オタクである青木がこっそり学校に持ってきていた少女漫画を成瀬に見られてしまったことにあります。
そこから時々、昼休みに視聴覚室で話すようになってくのですが、この接点である少女漫画が好きというのが、成瀬の嘘であったと後に分かります。
好きな子と接点を作るために、その子の好きなものを好きと嘘をつく。
もうこの行動がかわいすぎます。
この嘘が分かったとき、”私は恋愛小説を読んでいる”と錯覚してしまう程キュンキュンしてしまいました。
2.青木の好みに合わせる
ある日を境に成瀬の容姿が一変します。
薄く化粧をしていたのに、ノーメイク。
髪はボサボサで瓶底眼鏡。
服も辛子色のカーディガンに、色褪せたスカート。
さらに、ババくさい薄ベージュのシャツにベレー帽という格好です。
思わず青木が「手塚治虫かよ」と形容してしまう程です。
成瀬にイメチェンの理由を問うと、「その方が青木の好みかもって。寄せた」と返ってきます。
好きな人の好みを想像して、自分を変える。
”好きな人のために可愛くなろうと努力する”はよく見る展開です。
しかし、見た目を下げるのは初めて見る展開でした。
日々見た目に気を使っていた成瀬にとってこの行動は、とても抵抗があることだと思います。
それでも、青木の気を引くためにこの行動をとっているのが健気でかわいいです。
綺麗事でまとめない
この物語は、よくある綺麗事で終わらせる訳ではなく、どろどろした部分に溢れています。
これがめちゃくちゃリアルっぽいです。
- 「ポイント」が全ての世界で話が進む。
- クラス内での嫌がらせ。
- 「ポイント」のノートがバレた後、久々に青木が登校したときに行われた”表面上だけ問題解決するHR”。
- 最低なことをする曽山に対抗するために包丁を持ち出す。
包丁は行き過ぎですが、リアルに溢れた物語だと私は感じました。
特に印象的なのは、HRの時間です。
青木を許して表面上は解決したように見える。
けれど実際は何も解決しておらず、嫌がらせは続いてるという状況がとてもリアル感があり印象的です。
「綺麗事を信じてる」
先程まで、このお話はリアル感に溢れていると書いてきました。
しかし、この本の終わり方は対照的です。
とても気に入っているので、抜粋します。
人間には目に見えないポイントがある。
そのポイントに、俺たちはいつも、左右されそうになる。
ポイントは大事かもしれない。
この世界で生き残るためには。
それでも、俺はポイントにならないことを大事にして、生きていきたい。
今、本当にそう思ってる。
(中略)
俺は綺麗事を信じている。
このとき、青木はまだ「ポイント」が見え隠れしている状態です。
さらに嫌がらせも収まったと明記されていません。
そんな青木が精一杯前を向いて歩き出す終わり方がとても気に入っています。
さいごに
読みだすと止まれないくらい夢中になって読める作品でした。
この本を読んで、「ポイント」について少し考えました。
「ポイント」は1番目につきやすく、人と比べやすい物であるが故に囚われてしまいます。
しかし、人と深く関わっていく中で最も重要になってくるのが「ポイント」に表れない部分だと思います。
青木が辿りついたように、私も「ポイントにならないものを大事に」できる人になりたいです。
他の人を関わるときは勿論ですが、自分自身のそういう部分も大切にして磨いていきたいと思いました。
「ポイントにならないもの」の大切さと併せて、「ポイント」の影響力を思い知った作品でもあります。
青木のように囚われ過ぎてしまうのは良くありません。
しかし、「ポイント」という存在があることを知ったうえで「ポイントにならないもの」を磨いていく。
そして時には、適度に「ポイント」をあげる努力をしていこう!というのが私の答えです。
皆さんはこの『アオハル・ポイント』を読んでどう思われたでしょうか。
コメントで教えていただけると嬉しいです。
今回、初めて本について書いてみました。
どこまで設定を書き残しておくか等、とても苦労しました。
拙い文章ですが、今後もゆっくり続けていこうと思うのでご覧いただけると嬉しいです。

