エイジレスの371回 自己免疫疾患の発症につながる新たな分子メカニズムの発見

 

 

 私たちの身のまわりには、細菌やウィルス、花粉、粉塵など、生体に悪影響をおよぼす生物や物質が存在しますが、これら病原体の侵入から身体を守るのが免疫という自己防御機構です。

 

 ところが、免疫システムが正常に機能しなくなると、自己の生体成分や細胞を「異物」と認識して、特定の細胞や組織を攻撃してしまい、病気を発症します。

 

 これが自己免疫疾患です。

 

 このような望ましくない免疫反応は、日本で約70〜80万人の患者数がいるという関節リウマチや、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症といった自己免疫疾患を引き起こします。

 

 これらの疾患は先進国で特に増加傾向にあり、塩分過多および高脂肪を特徴とする欧米化した食生活がその一因であることも示唆されています。

 

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  近年、ヘルパーT細胞という免疫システムの司令塔の役割をしている細胞の一種「Th17細胞」が自己免疫疾患の発症に密接に関与することが明らかになってきています。

 

 これに伴い、Th17細胞の分化に必要な分子を標的とする自己免疫疾患の治療法の開発が世界中で行われています。

 

 自己免疫の原因となるTh17細胞は極めて強い炎症をおこす能力をもっています。

 

 しかし全てのTh17細胞がそのような高い炎症誘導能力をもつわけではありません。

 

 実際、私たちの腸には常に多数のTh17細胞が存在し、腸の正常な働きの維持にかかわることが示唆されています。

 

 したがってそのような良性のTh17細胞ではなく、自己免疫をおこす悪性のTh17細胞のみをピンポイントに狙う治療法が望ましいと考えられます。

 

 しかし、これまで、このような目的に適う分子メカニズムはほとんどわかっていませんでした。

 

 

 ・転写因子JunBの発現を抑制した細胞では、悪性Th17細胞の分化が強く抑えられることが確認されました。

 

 ・転写因子JunBが良性のTh17細胞の分化には必要ないことを示唆します。

 

 ・JunBが悪性Th17細胞のみを制御するための治療標的となることを示唆します。

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 難しいお話ですが、要は、転写因子JunBってやつをうまくコントロールできれば、自己免疫疾患の発症を抑えられる可能性があるということです。

 

 自分の免疫のことなので、非常に治療が難しい病気ですが、有効なお薬ができそうな感じです。

 

 例によって、お薬が使えるようになるには、10年ぐらいかかりますので、既に病気が発症されている方は、何とか踏ん張ってください。