エイジレスの367回 急性骨髄性白血病を克服する治療法
急性骨髄性白血病(きゅうせいこつずいせいはっけつびょう、AML)は白血病の一種で、骨髄系の造血細胞が腫瘍化し、分化・成熟能を失う疾患です。
白血病細胞が増殖して骨髄を占拠してしまうために正常な造血が行えなくなり、赤血球、白血球、血小板が減少するために出血、易感染症、貧血などの諸症状を起こします。
また、末梢血にあふれ出た白血病細胞が各臓器に浸潤し、各臓器の組織を破壊することで様々な症状を引き起こします。
受診のきっかけとなる初期症状としては、
・鼻血や歯肉からの出血が止まりにくい、
紫斑、点状出血ができるなどの易出血症状
・風邪だと思っていたがなかなか熱が
下がらないなどの感染症
・全身倦怠感・息切れなどの貧血症状
などがあようです。
白血病の中でも、成人に多い血液がんである急性骨髄性白血病は再発率が高く、命を落とす人が少なくありません。
このため、再発を防ぎ、根治へと導く治療法の開発が強く望まれています。
急性骨髄性白血病では、患者ごとに複数の異なる遺伝子異常が存在しており、そのうちのどれが白血病発症に不可欠か、また治療標的として最適かは分かっていませんでした。
ということで、今回は、悪性白血病細胞を根絶する方法を見つけたというお話です。
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国際共同研究グループはまず、患者から得られたさまざまな細胞を免疫のないマウスに移植して作出するヒト化マウスを用いて、多くの場合、造血幹細胞から少し成熟した前駆細胞の段階で白血病細胞へ変化することを見いだしました。
さらに、ヒト化マウスから正常造血幹細胞と白血病幹細胞を取り出し、1幹細胞ごとの遺伝子解析を繰り返した結果、FLT3という遺伝子に異常が起きると、正常血液細胞が白血病細胞へと変わることが分かりました。
次に、FLT3遺伝子異常と他の遺伝子異常を同時に持つ19人の患者の病態をヒト化マウスで再現し、治療法の開発を目指しました。
ヒト化マウスにFLT3タンパク質の異常なシグナルを阻害する低分子化合物「RK-20449を投与したところ、19症例全てのヒト化マウス体内で患者由来白血病細胞が減少しました。
そのうち、5症例では血液だけでなく、骨髄などの臓器でも白血病細胞を根絶することができました。
残る14症例のヒト化マウスでは、RK-20449に抵抗性を持つ白血病細胞が一部死滅せずに残りました。
この治療抵抗性の原因は、細胞が死なないようにBCL2タンパク質が働くためであることを突き止めました。
そこで、ヒト化マウスを用いて再び実験したところ、RK-20449とBCL2阻害剤を併用することで、FLT3遺伝子異常を持つ症例の約8割で、患者の白血病細胞を根絶できることが分かりました。
FLT3遺伝子異常のある急性骨髄性白血病の治療は特に難しいことが知られており、本成果は今後、特に治療が難しい急性骨髄性白血病患者を救うための新たな治療法になるものと期待できます。
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ということで、FLT3という遺伝子に異常がある方には、とってもいい話です。
既に、お薬もあるようなので、かなり期待が持てます。
問題は、自分のFLT3という遺伝子が正常か、異常かを自分では判別できないため、専門家がおられるところに行かないといけないのですが、遺伝子レベルで診察できるところは、非常に限られています。
該当する可能性のある方は、しっかりと病院選びをしてみてください。