エイジレスの361回 【微生物学】女性生殖管のマイクロバイオーム
女性は、男性よりも機能が複雑なため、様々な特有の病気があることは、皆さんも、よくご存じかと思います。
今回のお話も、そんなお話の一つですが、ヒト胎児が無菌環境で発生・発育するという従来の学説に疑問を投げかけている点において、注目すべきお話です。
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女性の膣には、数多くの微生物が定着していることが知られている。
が、感染症を発症していない女性の上部生殖管に特定の微生物叢が存在しているかどうかは明らかになっていなかった。
今回、Huijue Jiaたちの研究グループは、生殖年齢の中国人女性110人の生殖管の内壁沿いに存在している微生物の解析を行った。
Jiaたちは、膣の下部3分の1の領域、後膣円蓋、子宮頚管粘液、子宮内膜、ファロピウス管、ダグラス窩の腹水の合計6部位で検体を収集した。
Jiaたちは、下部生殖管(膣と膣円蓋)には、主に乳酸菌が生息していることを発見した。
この結果は、過去の研究報告とも一致している。
上部生殖管では乳酸菌が次第に少なくなり、代わりに緑膿菌など、他の細菌が生息していた。
また、Jiaたちは、上部生殖管で採取した細菌を培養し、この部位における生きた細菌の存在を実証した。
さらに、Jiaたちは、微生物叢のバリエーションが月経周期の各期だけでなく、子宮筋腫と子宮腺筋症、子宮内膜症を原因とする不妊症などの疾患とも相関していることを明らかにした。
今回の研究によって得られた知見は、女性の上部生殖管に生きた細菌が存在しているという考えを裏付けており、そのうえ、子宮頚管粘膜の微生物叢の解析によって子宮と腹腔の健康状態を調べることが可能だと考えられることを示している。
子宮頚部の微生物叢解析を膣-子宮疾患のバイオマーカーとして用いる可能性を検証するためには、今回より大型の前向きコホートを使った研究が必要になると考えられる。
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日和見感染症の代表と言えるのが、緑膿菌感染症です。
緑膿菌は、人の腸管の中をはじめ、自然界に広く分布しており、栄養分の少ないところでも増殖できるので、水周りによくみられます。
ほかの病原菌と一緒に感染(混合感染)することが多く、抗生物質に抵抗性が強いので、菌交代症をおこします。
抵抗力の非常に低下した人に、敗血症、呼吸器感染症、尿路感染症、褥瘡、肝・胆道系感染症、消化管感染症などを引き起こします。
そんな危なっかしい菌が、上部生殖管に生息していたとは驚きでした。
逆に言えば、もっと危なっかしい菌が住み着くのを防いでいるわけですので、ヒトも進化の過程で、かなり微妙な選択をしたものだと感心します。
健康に問題がなければ、人体への影響はないとのことですので、妊婦の皆様におかれましては、くれぐれもご自愛頂ければと思います。