エイジレスの354回 未熟児網膜症の発病機構

 

 

 知らなかったのですが、赤ちゃんが新生児特定集中治療室(NICU)で治療を受けたばっかりに発症する病気の一つに未熟児網膜症というのがあるようです。

 

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 早期出産などに伴う低出生体重児は、分娩時には低酸素状態に陥っていることが多く、出生直後から新生児特定集中治療室(NICU)において集中的に管理・治療を受けます。

 

 NICU の内部は、低酸素や循環不全への対応のため、高い酸素濃度が保たれています。

 

 つまり低出生体重児では、分娩時からその後の集中治療において、大きな酸素濃度の変化にさらされることとなります。

 

 出生時の体重が特に少ない超低出生体重児では、このような集中治療の間に網膜症を発症することがありますが、これは酸素誘導性未熟児網膜症と呼ばれ、重症化した場合に患者が盲目となるため、社会的に問題の大きい疾病のひとつです。

 

 また、中枢神経障害や呼吸器障害など重篤な障害も多く併発します。

 

 

 マスト細胞は、アレルギー疾患を誘導する細胞として知られていますが、寄生虫などの感染に対しては生体防除的に働くこともあります。

 

 他方、近年の研究では、血管新生を誘導し、組織のリモデリングや慢性炎症、さらに発ガンにも関与することが明らかとなっています。

 

 

 マスト細胞欠損マウスでは相対的低酸素飼育環境においても OIR を発症しませんが、マスト細胞2を前もって移植しておくと OIR を発症するようになりました。

 

 これは OIR 発症に、酸素濃度の変化だけではなくマスト細胞の存在が必須であることを示しています。

 

 また我々は、酸素濃度の大きな変化、特に相対的な低酸素状態に置かれることでマスト細胞が活性化されること、マスト細胞に発現するtransient receptor potential ankyrin 1 チャネルがマスト細胞の酸素濃度変化のセンサーとして機能していることを証明しました。

 

(中略)

 

 OIR モデルを用いたこれらの新知見は、未熟児網膜症の病態発現機構の解明につながるものです。

 

 また、マスト細胞由来の因子に着目した診断技術や、マスト細胞を標的とした新奇治療薬開発の可能性を示しています。

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 少子化の進展の原因の一つに出産の高齢化がありますが、それに伴う未熟児や先天性異常児も増えているようです。

 

 研究の段階としては、動物実験の段階なので、実用化はまだ先の話になるようですが、道は示されたようですので、未来のあかちゃんたちのためにも、早い実用化が期待されるところです。