エイジレスの352回 膵がん細胞をレクチン融合薬で狙い撃ち ~ 新規抗がん治療法
がんの治療が格段に進んだ現代において、がん全体として治る確率(5年生存率)は約60%に達しています。
しかし、膵(膵臓)がんだけは例外で、未だに治る患者さんが10%に満たない難治がんの代表です。
外科手術と放射線治療に関しては、精力的な開発が世界中で長年行われてきましたが、今後これらの治療法の改善によって膵がんの治療成績を大きく向上させるのは容易ではないと見込まれます。
抗がん剤の進歩もめざましく、ナノ粒子製剤、分子標的抗体薬によって一定の治療効果の底上げがなされましたが、標的となるタンパク質抗原はほぼ探索し尽くされた感があり、今後大きな発展は望みにくい状況です。
さらに、抗体医薬による治療には、一人のがん患者あたり、年に数百万〜数千万円という高額な薬価がかかります。
この状況は、医療経済の破綻を招く恐れがあり、安価で治癒効果の高い新しい治療法の開発が望まれています。
(難しいので、ポイントのみ記載しました。)
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研究成果のポイント
1. 難治がんの代表である膵がん細胞表面に強く発現している糖鎖と、それを特異的に認識するレクチン(糖鎖結合能力を持つタンパク質)を発見しました。
2. レクチンに抗がん薬を融合させた LDC (Lectin Drug Conjugate) は、血液凝集などの副作用がなく、安全に生体に投与できることをマウスで確認しました。
3. 細胞最外層を覆っている糖鎖を、レクチンにより標的するという新規アプローチにより、様々なマウス膵がんモデルの治療に成功しました。
4.高価な抗体治療薬に取って代わる、安価なポスト抗体医薬としてレクチンが有力な薬剤キャリアーになる可能性を示しました。
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膵(膵臓)がんの治癒率が、10%に満たないとは知りませんでしたが、今回のお話は、膵がんの患者さんには、凄い朗報だと思います。
新たに薬を開発するのではなくて、既にある抗がん剤を膵臓に運ぶためのキャリアーなので、実用化は早そうです。
まだ、ネズミさんの段階なので、臨床試験はこれからだと思いますが、効果は確認されているようですので、研究の早い進展が期待されるところです。