エイジレスの349回 腎臓病治療薬の開発

 

 

 腎臓病は、腎臓の糸球体や尿細管が冒されることで、腎臓の働きが悪くなる病気です。

 

 腎臓病にはさまざまな種類があり、それぞれの原因や症状も異なります。

 腎臓の機能はいちど失われると、回復することがない場合が多く慢性腎不全といわれる病態になります(急性腎不全の場合は機能が回復することもあるとのことです)。

 

 今回のお話は、罹患してしまうとやっかいな腎臓病の患者さんに朗報となりそうなお話です。

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 腎臓病の進行により透析にいたる患者数は年々増加しており、医療費の増加が大きな問題となっています。

 

 透析患者数は約 32 万人(2015 年日本透析学会調べ)で、腎臓病は新たな国民病と言われるまでになっています。

 

 腎臓病の進行を防ぐためには、慢性的な炎症の際にコラーゲン等の繊維タンパク質の蓄積によって腎組織が硬くなってしまうこと(線維化)を抑止することが重要と考えられていますが、現時点では有効な治療法は確立されていません。

 

 

 この慢性炎症による腎臓病の進行には、障害された腎組織で産生される炎症を引き起こすタンパク質(炎症性サイトカイン)
が関与していると考えられています。
 

 本研究では、遺伝子発現を制御する転写因子 GATA2 が腎臓の特定の細胞(集合管上皮細胞)に存在し、腎臓病時に集合管上皮細胞からの炎症性サイトカインの産生を促進する機能があることを明らかにしました。

 

 また、集合管上皮細胞でのみ転写因子 GATA2 を欠失するマウス(G2CKO マウス)を作製したところ、G2CKO マウスでは腎臓病誘導時の腎臓線維化を起こしにくいことも明らかにしました。

 

 さらに、GATA因子阻害剤のハイスループットスクリーニンング注 3 で見いだしたミトキサントロンが GATA2 の発現を抑制すること、また、急性腎不全モデルマウスの腎臓線維化を抑止することを見いだしました。


 これらの結果は、集合管上皮細胞での炎症性サイトカイン放出に GATA2 が関与していること、GATA2 の機能を阻害すれば集合管上皮細胞からの炎症性サイトカイン放出を抑制でき、慢性的な炎症により引き起こされる腎臓線維化を抑止できることを示しています。

 

 本研究は、転写因子 GATA2 の機能を抑制することによって、腎臓病における腎組織の線維化を抑制できることを示した世界で初めての研究成果です。

 

 本研究成果により、これまで有効な治療法に乏しかった腎臓病に対する新規治療法として、ミトキサントロンなどの GATA 因子阻害剤が応用されると期待されます。

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 透析治療で、不自由な生活をされている皆さんがすぐに開放されるかは、何とも言えないところがありますが、少なくとも、悪化するのは防げそうです。

 

 移植やi PS細胞などで、まるごと入れ替えるのが良いのかもしれませんが、そんな治療が当たり前になるまでは、自前の腎臓で頑張るしか無さそうです。

 

 減塩めしで、腎臓をお守りください。