エイジレスの339回 卵巣がんの一組織型で遺伝子変異ネットワークを構築

 

 

 明細胞がんは、比較的初期に発見されるものの、化学療法が効きづらく、治療が難しいがん種です。

 

 また、閉経後に、子宮内膜症が、がん化する例が多いことが知られています。

 

 欧米では卵巣がん全体の 4%-12%が明細胞がんの患者さんですが、アジア人では発症率が高く、日本では卵巣がん全体の15%-20%を占めます

 

 欧米での患者数が少ないこともあり、がん遺伝子のデータベース整備が十分とは言えませんでした。

 

 

 今回のお話は、やっかいな明細胞がんの治療に関するお話です。

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 今回の研究では、明細胞がんの患者さん 39 人のがん組織と 16 人の血液を対象に、遺伝子の中でタンパク質合成に関わる領域に変異があるかどうかを網羅的に調べる全エクソーム解析を行いました。

 

 変異の有無を調べるために、通常は世界的なヒトゲノムデータベースとの比較を行います。

 

 しかし、明細胞がんは特にアジア系で発症率が高いがんであるため、今回は「ながはま0次コホート 1」を含む日本人の健康な方のゲノムデータ 1208 名分との比較を行いました。

 


 解析の結果、がんに特徴的な遺伝子として、複数の患者さんの腫瘍で検出された 426 の遺伝子変異を特定し、これらを用いて、相互に影響する遺伝子の働きから、タンパク質同士の相互作用データをもとにネットワークを構築しました。

 

 PIK3CA、KRAS、PTEN、PPP2R1A など細胞増殖にかかわるシグナル経路やARID1A、ARID1B、SMARCA4 などクロマチン修飾に関連する経路の他に、細胞周期のチェックポイントや細胞骨格に関連する 4 つのネットワークを同定しました。

 

 これら 46 の遺伝子の多くは明らかにがんの抑制や進行に関わっていると考えられており、タンパク質同士の相互作用データをもとにネットワークを構築したことで、多くの遺伝子の相互作用ががんの発症や進行に関わっていることが分かりました。

 

 一方、ネットワーク上で一種のハブとしての役割を果たしているにもかかわらず、がん化するうえでの機能が良くわからないタン
パク質に関連する複数の遺伝子変異(TTN など)を発見しており、今後の機能解明が待たれます。


 また、今回の研究では個々の遺伝子の異常だけではなく、細胞分裂の際にコピーされる遺伝子の量の異常(コピー数)も検証しました。

 

 

 その結果、全体的にがんを抑制する遺伝子のコピー数が少なくなり、がんを進行させる遺伝子は多くなるなど、エクソーム解析で判明した原因遺伝子はその量にも異常が起きていることが分かり
ました。

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 46もの遺伝子が、ガンの発生に関与しているということです。

 

 なので、ガンを根治するには、すべての遺伝子の働きを止めるのがベストなのですが、現状、有効な手立てはありません。

 

 既に、ガン化されている場合は、従来のがん治療法に頼るしかありません。

 

 心配な方は、親はもちろん、親戚の方に卵巣がんの方がおられないか調べた上で、疑わしい場合には、ホルモン治療などの選択肢も考慮しておいた方が良さそうです。