エイジレスの334回 空気よりも軽い氷?!
氷を圧縮すると、だんだん密度が高くなり、次第に結晶構造が変化します。
常圧で、冷凍庫でできる氷は、雪と同じ六角形の分子配列を持つ氷(密度 0.92 g/cm3)ですが、何千気圧もの圧力をかけたり、逆に、気圧を低くしたりすると、氷の結晶が通常とは違う形で形成されます。
で、現在のところ、高圧では、15種類の結晶が見つかっている反面、低圧では、2種類しか見つかっていませんでした。
今回のお話は、理論的にありうる低圧での氷の結晶を予測してみたお話です。
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負圧の氷構造を実験で調査することは極めて難しいため、研究チームは理論的にこの問題に挑戦しました。
氷と幾何構造が良く似ている、ゼオライト*1) という酸化ケイ素無機結晶の構造をもとに、新しい氷の構造を設計し、分子シミュレーションによって、それぞれの構造の安定性を評価して、与えられた圧力で一番安定な氷を網羅的に調査しました。
調査した構造は 300 種類に及び、その全てが氷 I よりも低密度(密度 0.5〜0.9 g/cm3)です。
その結果、ある種のゼオライトの構造をもとに設計した氷は、実験で発見されている低密度の氷よりも格段に密度が低く、しかも安定になりうることがわかりました。
また、これらの低密度で安定な氷の構造の特徴をもとに、仮想的な氷の構造を設計したところ、さらに低密度な氷もありうることを初めて示しました。
この氷の構造は、エアロゲル*2) と呼ばれる酸化ケイ素素材に似ていることから、エアロアイスと名付けました。
エアロアイスの密度は非常に低くすることができ(密度 0〜0.5 g/cm3)、100xFAU と名付けられたエアロアイス結晶の密度は、空気よりも軽くなります。
ゼオライトやカーボンナノチューブ、生体高分子などに存在する、ナノサイズの空孔にとらえられた水の構造や機能を理解する上での大きな手掛りになります。
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なんと、空気より軽い氷の結晶ができる可能性があるようです。
実現したとして、何に使うかは不明ですが、一度見てみたい気はします。