エイジレスの332回 病原体センサーの機能
哺乳類の免疫機能は、主に自然免疫と獲得免疫に分類されます。
主にリンパ球の働きによる獲得免疫は、抗原特異的な抗体の産生により病原体を特異的に認識し排除します。
また、自然免疫を担うマクロファージはToll様受容体(TLR)が病原体を特異的に認識し排除することで感染防御が成立することが分かってきました。
TLRは、ショウジョウバエの発生における背腹軸の決定に必須の因子Tollとしてクローニングされた分子です。
哺乳類においてもその存在が明らかとなり、さまざまな病原体が持つ特有の分子を検知して自然免疫を作動させることが分かっています。
ヒトでは10種類(TLR1~10)が存在し、それぞれのTLRを活性化するウイルスや細菌などのリガンドが同定されています。
今回のお話は、免疫機能が、たった一つの糖の有無で大きく変わることを見いだしたとのお話です。
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今回、共同研究チームはTLR4を介する自然免疫での糖鎖の役割を明らかにするために、「コアフコース[6]」という糖に着目しました。
コアフコース欠損細胞を用いて、TLR4のリガンド[7]であるリポ多糖(LPS)[8]で刺激したところ、2種類のTLR4シグナル伝達経路のうちTRIF依存的経路を介するインターフェロン-β(IFN-β)[9]の産生が特異的に抑制されることを見いだしました。
これは、細胞表面に存在するTLR4/MD2複合体の細胞内への取り込みが抑制されたためと考えられます。
すなわち、コアフコースが自然免疫における病原体センサーTLR4のシグナルを介した感染防御に必須であることが明らかになりました。
IFN-βは免疫機能を活性化し感染防御に重要な役割を果たすとともに、免疫活性による腫瘍増殖抑制作用も報告されています。
今後、その分泌メカニズムをより詳しく解明することで、感染症や腫瘍に対する効率のよい治療法の開発につながると期待できます。
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フコース(fucose)は、デオキシ糖の一種である6-デオキシ-ガラクトースで、化学式はC6H12O5、分子量164.16の小さな物質です。
天然にはL型がL-フコシドの形で、動植物に幅広く存在します。
名前の由来は、昆布のねばねば成分としても知られるフコイダン(Fucoidan)で発見されたためと言われています。
で、フコースの1種であるコアフコースが自然免疫の感染防御に必須であることがわかったとのことです。
免疫機能が、たった1種類の糖によってコントロールされていることは驚きでしたが、普通に食事をしていれば、問題のない物質ですし、どうしてもという時には、海藻のネバネバ成分を食べればいいので、補給は簡単です。
免疫機能を高める方法はいろいろとありますが、まずは、海藻を食べることから始めてみるのもいいかもしれません。