エイジレスの322回 新たな花粉症治療薬の開発にも期待

 

 

 ヒトの体には,身体にとっての異物(アレルゲン)が体内に入ってきた際,アレルゲンに対抗する物質(抗体)を作って排除・防御するしくみがありますが,抗体が体内で増えすぎて過剰に反応して
しまうことを,アレルギーといいます。

 

 現代社会において,アレルギーはますます大きな問題となっており,人類の 30%以上が苦しんでいると報告されています。


 このような背景の中,アレルギーの代表例である花粉症患者には,花粉だけではなく特定の果物や野菜に対してもアレルギー症状を示す場合があり,花粉食物アレルギー症候群と呼ばれています。

 

 この原因は,花粉アレルゲンと植物性食物アレルゲンに共通する抗原分子による交差反応と考えられており,口腔内にかゆみを伴う程度の軽症から,喘息やアナフィラキシーなどの重篤なものまで多くの症状を伴います。

 

 シラカンバ花粉症患者のリンゴやモモに対するアレルギー等が有名ですが,その発症機構には未知の点も多く残されています。

 

 

<研究成果のポイント>


・西洋ヒノキ花粉症と果実による口腔アレルギー症候群の共通原因であるペプチドの同定に成功。
 

・植物界に広く存在する防御タンパク質ファミリーが花粉症の原因となることを解明。
 

 現在,花粉症の治療薬の開発では,本研究で重要性が発見されたペプチド抗原の作用は考慮に入れられておらず,今回の発見が新たな治療薬の開発につながる可能性があります。

 

 また,今回のペプチドが植物界に広く存在するものであることから,新たなアレルゲンの発見と治療法の開発につながる可能性も期待されます。