エイジレスの321回 血液細胞の分化に必要な遺伝子
白血病の新たな治療法の開発につながる発見です。
ヒトゲノムには遺伝子が約2万あると推定されていますが、その全てが同時に働いているわけではありません
(最新の解析から、各細胞ではタンパク質をコードする遺伝子のうち約1万個が発現)。
一つ一つの細胞を見ると、細胞の生存に必須な遺伝子と、細胞の個々の機能に関わる遺伝子が働き、その他の遺伝子は「オフ」になっているためです。
そして細胞はオフになった遺伝子を「オン」を切り替えるさまざまな仕組みを備えており、その一つが「DNAの脱メチル化」です。
研究チームは、血液の細胞が作られる際にゲノムの広い領域にわたってDNAメチル化の状態が変化することに着目し、脱メチル化を制御しているタンパク質を突き止めました。
RUNX1(ランクス1)と呼ばれるそのタンパク質は、血液細胞の遺伝子発現を制御することが知られており、決まったDNA配列に結合する転写因子の一種です。
RUNX1の働きを詳しく調べたところ、DNAに結合したRUNX1は脱メチル化に関わる酵素群を引き寄せることが分かりました。
さらに、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から血液細胞を分化させる際にも、RUNX1によるDNA脱メチル化が重要な働きをしている可能性が示されました。
白血病などの血液疾患では、RUNX1の機能に異常が生じていることが報告されています。
今後、RUNX1によるDNA脱メチル化と疾患との関係が明らかになれば、新たな治療法の開発が期待できます。