エイジレスの319回 側彎症の進行に関連する遺伝子を発見

 

 

 側彎(そくわん)症は、背骨が曲がる疾患です。

 

 神経や筋肉の病気、脊椎の奇形などが原因で起きるものもありますが、その多くは原因が特定できない特発性側彎症です。

 

 特発性側彎症の中で最も発症頻度が高いのが思春期に起きるAISで、全世界で人口の約2%にみられる非常に頻度の高い疾患です。

 

 AISの発症、進行には遺伝的要因が関与すると考えられています。

 

 AISの発症しやすさ(疾患感受性)を決定する遺伝子「LBX1」「GPR126」「BNC2」は発見されていましたが、今回、AISの進行に関連する遺伝子を発見したとのことです。

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 日本人のAIS患者2,142人について、側彎の進行の有無を決定し、ヒトのゲノム全体を網羅する約750万個の一塩基多型(SNP)を調べ、側彎の進行の有無と強い相関を示すSNPを見つけました。

 

 さらに、この結果を別の日本人のAIS患者606人を用いた相関解析により確認し、AISの進行と非常に強い相関を示す一群のSNPを見つけました。

 

 これらのSNPはMIR4300HGという遺伝子内に存在しました。

 

 MIR4300HGは、「MIR4300」というマイクロRNAをコードしています。

 

 高い相関を示すSNPの一つrs35333564を含むゲノムの領域は、遺伝子の発現に関わるエンハンサー活性を持ち、進行に関連するSNPの対立遺伝子座位(アレル)を持つゲノムの領域では、エンハンサー活性が低下していることから、MIR4300量の低下が、側彎の進行に関連する可能性が考えられます。

 今後、MIR4300の機能をさらに詳しく調べることで、側彎進行の予測法の開発、分子レベルでのAISの病態の解明、側彎進行の予防法や治療薬の開発が期待できます。

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 ゲノムが解読できるようになって、様々な病気の原因がわかるようになってきていますが、側彎(そくわん)症のような、遺伝的要素が強い病気の場合は、特に期待が出来ます。

 

 現在では、特定の遺伝子に直接作用する治療法も開発されてきていますので、原因となる遺伝子が特定された今回の研究成果は非常に大きい成果です。

 

 全人口の2%も患者さんがおられるので、早めの治療法の開発が望まれるところです。