エイジレスの311回 腸内微生物相による健康管理の仕組み
腸内フローラ(細菌叢(そう))が人の生存に深く関わっていることをご存知の方も多いかと思います。
健康維持は勿論、免疫機能やホルモンバランスなど、実に様々な機能があります。
つまり、腸内の細菌バランスが悪いと、生死にもかかわる重大な事態に発展することもあるようです。
今回のお話は、そんな腸内細菌の新たな働きのお話です。
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ヒトのマイクロバイオームは、生理機能と健康に重要な役割を果たすと考えられているが、その基盤となる機構についての解明は進んでいない。
細菌は、低分子を使って周辺環境と相互作用するが、ヒトの微生物相も低分子を使ってヒト宿主と相互作用しているという仮説が提唱されている。
しかし、それに関係している可能性のある分子の特定とその機能の仕方の解明はなされていない。
今回、Sean Bradyたちの研究グループは、ヒトの腸内細菌によって産生されるN-アシルアミドが5種類のヒトGタンパク質共役受容体(GPCR、一般的な薬剤標的である膜タンパク質ファミリーの1つ)と相互作用することを報告している。
Bradyたちは、マウスと細胞のデータを解析して、こうした細菌の代謝産物がGPCR の一種であるGPR119を活性化させて、マウスの代謝ホルモンとグルコース恒常性を調節する能力を有することを明らかにした。
今回の研究結果からは、微生物相によって産生される低分子が細菌のシグナル伝達分子を模倣でき、この模倣が将来的に糖尿病、肥満などの疾患の治療に利用できる方法となる可能性のあることが示唆されている。
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腸内細菌の働きの多くは、細菌そのものの働きというよりは、細菌が生み出す物質の働きによるものが多いようです。
今回のお話も、腸内細菌が生み出すN-アシルアミドという小さな有機化合物が、糖尿病、肥満などの疾患の治療に利用できるということです。
自分の体の中にありながら、完全には解明されていない腸内細菌ですので、今後も、こんなお話が、ちょくちょくでてくると思います。