エイジレスの310回 パーキンソン病患者の傷ついた神経を置き換える

 

 

 前回に引き続き、パーキンソン病についての最新研究報告です。

 

  パーキンソン病は、世界中で約一千万人の人々が罹患している神経疾患で、日本人の1000人に1~1.5人(60歳以上では100人に1人)が発症していると言われています。

 

 ですが、根治する方法がないため、多くの方が苦しんでおられます。

 

 今回のお話は、i PS細胞を使って、原因となっている組織ごと取り替えてしまうというお話です。

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 i PS細胞は、さまざまな細胞に分化する能力を備えるように再プログラム化された成体細胞だが、ヒトi PS細胞は、神経疾患患者の脳内で損傷した神経細胞を置き換える細胞療法に用いられる細胞の供給源として有望視されている。

 

 パーキンソン病の場合、ドーパミンを使って情報伝達を行う神経細胞(ドーパミン作動性ニューロン)が損傷している。

 

 これまでのところ、パーキンソン病の霊長類モデルを用いたヒトiPS細胞由来ドーパミン作動性ニューロンの長期研究は行われていない。

 

 そこで高橋淳(たかはし・じゅん)たちの研究グループは、このニューロンをパーキンソン病のモデルの1つを示すサルの脳に移植して、安全性と機能を評価した。

 

 その結果、このヒト由来の神経細胞が長期間生存して中脳ドーパミン作動性ニューロンとして機能し、さまざまな運動を回復させたことが明らかになった。

 

 安全性に関しては、このニューロンから少なくとも2年間は脳腫瘍が発生することはなく、免疫応答の誘導も全くないか、弱い免疫応答が誘導されるだけだった。

 生存しているドーパミン作動性ニューロンの数は動物によって異なっており、高橋たちは、その生存に影響を及ぼす遺伝的特徴を同定したが、これは、臨床条件下で最適な細胞株を選ぶために利用しうる。

 

 今後研究を重ねて、良質なドナー細胞のマーカーとして最も優れたものを突き止める必要があるが、今回の研究結果は、神経疾患の細胞療法の開発に寄与する可能性がある、と高橋たちは結論付けている。
 

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 お猿さんでの研究段階ではありますが、パーキンソン病根治に向けて、いい結果が得られたようです。

 

 i PS細胞なら、骨髄みたいに適合する人を探す必要もないため、適用可能な患者さんが一気に拡大します。

 

 費用や安全性など、クリアしないといけない課題も少なくないようですが、早く実用化できることを祈念するばかりです。